かわさき

No.09

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失敗と苦労を重ね、

作り上げられた味が、

地域に愛され続ける。

多くの会社が立ち並ぶ金沢市畝田中の一角に黄色い外観が印象的な『かわさき』がポツンと佇む。自家製マヨネーズで食べるお好み焼きがウリのこの店、昼時は腹を空かせた会社員が集まり、夜には夕飯代わりの持ち帰り注文が殺到するらしい。ソースとマヨネーズの香りに誘われ、絶メシ調査隊寺田が店に向かった。

「どうも! 絶メシ調査員の寺田です。暑い夏、汗を流しながら食べるお好み焼きもまた乙! また、自家製のマヨネーズ使用って…。惹かれますね。どんなものが出てくるのか楽しみです!(あぁ後はビールがあれば最高なんだが…)」

暖簾をくぐりドアを開ければ

店主の河崎弘(かわさきひろし)さんとヤス子さん夫妻が出迎えてくれました。

ライター寺田
「どうも、よろしくお願いします。早速なんですが、お店のことを聞かせて下さい」
弘さん

「店は今年で32年目、私も76歳になりました」

ヤス子さん
「今じゃお父さんが中心でやってますけど、この人(ご店主)はサラリーマンだったから。お店を出した当初は、昼は私一人で厨房に入ってたのよ。だから最初はお好み焼きと定食だけ、そこから麺類や丼も増やしていったのよ
ライター寺田

「お母さん一人で!? ご主人は会社から帰ってきて夜に厨房に入ってたんですか」

弘さん
「そうですね。あとは会社が休みの日とか。近隣の人が気軽に来れるような店にしたいって、自分が開店を決意した店だからね」
ヤス子さん

宣伝とかはしていなかったし、私も昼間は一人でも大丈夫かなって。徐々に口コミでお店のことが広まってね。少しずつ来てくれるご近所さんが増えていってくれたの

ライター寺田

「へぇ~。今じゃ近くの会社の方なんかも来られているって聞いたんですが」

弘さん
「嬉しいことにね。昼は店でご飯食べて、うちは持ち帰りもやってるから、夜は自分家でって人も多いわ。うちの持ち帰りの容器はそのままレンジに使えるから。食事の支度もなるべく楽にしてもらいたいからね。コストは普通の容器よりかかるんだけど…(笑)」
ライター寺田

「なるべくお客さんの負担にならないように、考慮してるってことですね」

ヤス子さん
「オープン時もね、近所だけだけど出前をやってたのよ。でも、私一人だからお客さんに留守番してもらってたこともあったわ。まぁ、その人も顔馴染みの人だったからね(笑)」
ライター寺田

「すごいですね。出前までやってたなんて(よくまぁお客さんもOKしたなぁ~)」

弘さん

「時間かかるし焼き始めていい?」

ライター寺田

「あ! すみません。よろしくお願いします」

噂が噂を呼び、多くの人が訪れる。
今日の晩御飯にと持ち帰り注文も増えて、
今では近隣の暮らしの一部にもなった。

調理は分担制。ヤス子さんが慣れた手つきでお好み焼きの具材を混ぜ合わせ、ご主人がそれを焼く。火加減に気を配りながらふっくらと焼き上げるのがこだわりとのこと。なるべくボリュームをつけたいと、キャベツをたっぷり使い、厚みを出すのがかわさき流。そのため、焼きに時間がかかるのだとか。調理過程を見ているだけで、テンションも上がってきます!

ヤス子さん

初めはね、近所の学生さんのために店を出したのよ。安くてお腹いっぱいになってもらいたくて。今じゃ会社勤めの人が多いんだけど(笑)

弘さん

でも、その人たちが家族で来てくれるようになって、その子供がまた大きくなってから来るんよ。それも長年やってきた醍醐味だね

 

ライター寺田

「それは、嬉しいことですよね」

ヤス子さん

「この人、お客さんの顔をよく覚えてるからねぇ~。私は、あんまり人としゃべるのが得意じゃないからすごいわ」

そうは言うものの、笑顔でいろいろ話してくれるヤス子さん。

弘さん

「うちは2種類のソースを使ってるんだけど、そのソースで味付けた焼きそばもおすすめなんです。作りましょうか?」

 

ライター寺田

「お願い致します!(それを聞いたらオーダーせずにはいられんでしょ!)」

ヤス子さん
「あと、これ自家製のマヨネーズなんですけど見ますか?」

どれどれ

固形感を強く、旨味を凝縮。
作業は二人で!

最初は失敗続きだったという、自家製マヨネーズ作り。調理工程は一人ではできず、ご夫婦で協力して作っているのだとか。混ぜ合わせる力加減や食材を入れる順序やバランス、一つ間違えれば、うまく固まらなかったり、味が定まらなかったり。そのため、「いつも神経を使って作ってます」とお二人。

そして登場!

2種類の特製ソースで味付けされ、自家製マヨネーズがのった「ブタ玉」550円。地物の野菜をふんだんに使い、厚みを出しています。

ライター寺田

「ボリューミー! 香りも良いですね。では、いただきます!」

 

大きな一切れにかぶりつきます。

コク深いソースと甘味のあるソースがまず野菜の甘味を立てる。後からマヨの濃厚な味わいが広がります。

ライター寺田

「うまい! 中はふわっと。2種類のソースがそれぞれしっかり効いてますね。自家製マヨネーズはこれ…からし? も入ってるんですかね。鼻に微かに抜ける辛味も絶妙ですね

ヤス子さん

「気づかれました? 隠し味として少量しか入れてないのに。お子さん連れてくる人も多いし、辛いのが苦手な人がいるかもって考えて、マヨネーズは上にのせてるんですよ。ソースの味もあるからほとんど気づかれないんですけね」

ライター寺田

「絶妙ですね。それにしても一枚が大きいですね。そしてメニューにある「お好み焼き定食」はこれにご飯も付いてくるってことですよね…。すごいボリューム」

ヤス子さん

「お好み焼き定食は、関西からおいでたお客さんに向こうにはこんなのもあるよって教えてもらったの。オープン時からお好み焼きとご飯頼まれる人も多かったし、味噌汁も付けて定食にしちゃおうって。お客さんの中には、お好み焼きの大盛りやご飯の大盛り、おかわりを食べられる人もおいでるからね~」

続いて「焼きそば」500円も到着!

これまた野菜や肉も多く、満足度も高そう。

ライター寺田

「あ!ソースのバランスが絶妙ですね。コクのある方が甘めのソースより若干多い感じ。でも野菜の旨味は消さないほどよい味わい。麺ももちもちですね」

弘さん
「ソース強めにしちゃうと味がね。食材とのバランスは大切にしてますね。野菜もなるべく多めに取ってもらいたいからね。だから、野菜だけで店の冷蔵庫はパンパン」

この価格でこのボリュームだから、
地元客やリーマンのオアシスに。

今ではこの地を離れた人も時折、店を訪ねてくれるのだとか。

弘さん
あの人この頃来んなーって思ってると、子供連れて来られたり。引っ越ししてしまった人も近くに寄ったから来たわーってことも良くあるね。そう言われると嬉しくてね」
ライター寺田

「記憶の中で忘れられない味。そんでお父さんお母さんがいるお店が恋しくなるんでしょうね。お父さん、お母さんもそういうお客さんがいらっしゃるから、がんばってるんですね

弘さん

「そやな。仕事の時間も長いし、店終わってから掃除。オープンキッチンにしたのは、お客さんから見られるところと思えば、手を掛けない訳にはいけないからね。店も常に綺麗にしておきたいし。で、店の事が終わったらやっと自分たちのご飯ですよ、忙しい日は12時を回ることもあったし。次の日もまた5時、6時に起きて仕込みしなきゃならんからね」

ヤス子さん
「定休日もお父さんは仕入れに出かけるから。こういう商売をすると子供連れて出かけることも中々できないからね。どうしても店中心の生活になるし。まぁ店を始める時には下の子が中学生。親と一緒に出掛ける頻度も減っていたからね」
ライター寺田

「お子さんは店を継がれる予定なんですか?」

弘さん

「いや継がんな、店始めるのも賛成はしてなかったし。継いでくれたら嬉しいんだけどね」

ライター寺田
「そうかぁ~(お父さんの大変な姿とか見てるからね)。お母さんも店やりたいって言われた時はお子さんたちと同じ意見だったんですか?」
ヤス子さん
「嫌でした(即答)。私は人としゃべるのが得意じゃないからお店やるのに抵抗があったし。今じゃね、お馴染みのお客さんもできて、色んなお話できるようになったからよかったって思うけどね」
弘さん

定年になってね。なんもすることなくなるのが嫌でね。新築立てるタイミングではじめた店だからね、妻にも感謝してますよ

ライター寺田
「理解がなかったらできなかったわけですもんね。お父さんも定年後は朝から晩までお店で動いてるわけですもんね」
ヤス子さん
まぐろと一緒。じっとしていられないのよ
弘さん
「止まったら死んでしまう(笑)」
ライター寺田
「当時は仕事終わってから遅くまで店やって。それでまた朝早くに仕事に出かけてたわけですもんね。大変じゃなかったんですか?」
ヤス子さん
「この人ね、つらいとか疲れたとかは言わないのよね。だから私も言えなくてね…怒られちゃうから(笑)」
ライター寺田
「30年以上この生活してて!?」
弘さん
「疲れったってのは、あまりないね。ずっとこのサイクルでやってるから。でもね、きっと動いているから私も健康でいられるんですよ」

長年親しまれた味と共に、ご夫婦の和やかな雰囲気が、訪れる人の心を掴むのだろう。時間のない昼時、お腹を満たすだけでなく、少しばかりゆったりとしたひと時を求め、今なお多くの人が足を運ぶ一軒である。近くにお越しの際には、特製ソースの香りに誘われ是非とも自家製マヨネーズが自慢のお好み焼きを味わってほしい。

最後の写真にポーズをとってほしいとお願いすると互いに握手を交わした二人。これまでありがとう、そしてこれからもよろしく。そんな気持ちを込められているのだろう。

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