平成元年オープン若大将

No.03

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「そこそこ男前で、

体力があって、話し好き」

映画俳優を夢見た若大将

金沢市の観光地東山近くに位置する橋場町に店を構えるラーメン店「若大将」。

予定よりもかなり早くにお店に到着してしまった絶メシ調査隊。アポ取りの際、電話口では演歌がガンガンに流れていたと聞き、ガテン系の風貌のいい大将、いや、若大将が身構えているのではないかと心中ドキドキしながらドアを開ける。。

(取材:絶メシ!いしかわ調査隊 ライター名:美緑トモハル)

義理人情に厚い大将が店を構えると
店内までもがにぎやかになる

醤油の香りが漂う店内。すでにお腹が鳴りそうだよー。
ライター美緑

「すみません!かなり早めについてしまいまして・・・」

中嶋さん
「あぁ、そうなの?いいんだけど、まだお湯を沸かしてなくって!」

と陽気に答えてくれる話しやすそうな店主にほっとしたのもつかの間、

ふと見るとお店の壁中におびただし・・・いや、大量の写真が貼られている。

!!!なんじゃこりゃぁぁ

昔は金大生(金沢大学の学生)がバイトに来てくれていて、卒業の思い出にとポラロイドで撮影したのをきっかけに写真が貼られるように。しかし、学生で常連さんという条件が無いと貼ってもらえない厳しい門なのである。にしても半端ない数です・・・。

ライター美緑

「常連さん、多いですね~。」

中嶋さん
「本当にいいお客さんばっかり来てくれる。商売冥利につきるわ。」

紆余曲折を経てオープンさせたラーメン店
苦労をも笑顔で語れる大将の懐の深さ

ここ若大将のオープンは平成元年。

何度も職を変え、このラーメン店をオープンさせるまでの、長い道のりを伺った。

若いころから時代劇や映画が大好きで、自身も映画俳優になろうと単身京都へ。

大映の京都撮影所へ行き、付き人をしながら夢を追ったが叶う事はなく、

ほどなくして金沢の実家へと戻ってきた。

中嶋さん

「貧しさに耐えられなくなって戻ってきたの。それでも、劇場用の映画に出たことあるんやよ!」

と、1本のビデオテープを見せてくれた。青春の思い出ですな~。しみじみ。
その後、当時金沢にあった単館の映画館で10年ちょっと働き、長距離トラックの運転手へと転身。この時に一度ご結婚をした中嶋さん。しかし長距離運転のハードさに長くは続かず、ようやく自分で商売をしようと奥さんに持ち掛けたところ、大反対をされてしまい、二人の意見は決裂。そのまま独り身となってしまった。
ライター美緑

「ものすごい紆余曲折があったんですね。そこから、ラーメン店を?」

中嶋さん

「いや、それが・・・」

ライター美緑

「まだあった!(笑)」

中嶋さん

「近所に食堂があって。で、僕バイトじゃないのに、兄ちゃん暇やったらこれ、どこそこに持って行ってって言われるようになって。はいはいってやっとったら、気が付いたらお店も手伝うようになってて・・・。バイト代貰ってなかったんやよ!」

なんとも不思議な話・・・でも、この食堂のお手伝いをしたことで、商売の何たるかを多少なりとも身近に感じ、さらに今の若大将の麺の仕入れ先とのご縁が繋がったというので、結果的にバイト代よりも価値のあるものを手にしたのかもしれない。

そうしてラーメン店を出す気持ちがさらに高まり、開店に向けて自宅でラーメンのスープを作っては、何度も試行錯誤を繰り返し、ようやくこの味ならお店が出せるだろうと言うところまでこぎ着けた。

ライター美緑

「お店をオープンさせてからは、このスープの味は変わってないんですか?」

中嶋さん

「それが、1回だけ変わったんや」

ライター美緑

「それはいつ頃?」

中嶋さん

「お店やり始めてすぐ。お客さんから、この味じゃダメやって言われて。ガックリきたし、ショックやった~。でも、それを聞いてすぐ、だしとスープの改良をして。で、周りの人にこれやったら美味しいって言ってもらえて。そこからは変わってないです。」

ライター美緑

「正直に感想を言ってもらえるってありがたい事ですよね」

中嶋さん

「そうやね」

『そこそこ男前で、体力あって、話好き』
必要なものはこの三拍子

ライター美緑

「多くの常連さんがいらっしゃると思うんですけど、この味を残していきたいって言う思いはあるんでしょうか?」

中嶋さん

「まぁ、ここに来てくれる人は、大将じゃなかったらこの店には来ないよって言ってくれるんやけど・・・」

ライター美緑

「もし、継ぎたいっていう熱意のある人が現れたら?」

中嶋さん

「熱意あったら、私は厳しくすると思うわ。でもなかなかおらんね。私が認める人じゃないと絶対ダメ。」

これまでに2人ほどそのお眼鏡にかなった人がいたが、話はまとまらなかった。

『そこそこ男前で、体力あって、話好き』

これが中嶋さんの条件!

この三拍子を持つ、我こそは!と思う男子に、ぜひ出てきて欲しいものです

 

まっすぐなこだわりを持つ男、中嶋さん。

こだわり抜いたその味を堪能しようとチャーシュー麺を~~、オーダー!!

「OK~♪」の軽い返事と共に、厨房へ。

そこでも大将・・・いや若大将の軽快なトークは続く。

カウンター越しに大将の話を聞きながら座っていると

アッッッッ!!!!

と言う間にチャーシュー麺が到着!

どどど、どーーん!!と大きなチャーシューが3枚!

麺が隠れてみえませんっ。澄んだ琥珀色のスープ。

油浮きがまったくなくて、すっきりした味わい。

緩やかにカーブしている麺は、醤油ベースのスープに合うっ

そしてガツンと厚みを残して切られたチャーシューが、口に入れるとほろほろっと崩れ、

わずかに残った油が舌の上でとろける。。。最高っ!!

自家製チャーシューは国産のいい豚肉を使い、余分な脂を落としきっているのであっさり。

この「チャーシューロール」だけでも買うことが出来るので常連さんもよく買いに来てくれるとか。
中嶋さん

「チャーシューちょっと、持って帰る?」

ライター美緑

「!!いいんですか!?」

まったく断る気配なく、すぐに受け入れる絶メシ調査隊(女子3名)
中嶋さん

「端っこの方やけど」

そういって、チャーシュー欲しさに整列する私たちにお土産を手渡してくれた。

ありがとうございますっっっ!!!

 

何度も職を変え来た中嶋さんがようやく見つけた生涯の仕事。やっていて楽しいからここまで続けられることができたし、これからも楽しんでラーメンを作っていけるとニコニコと話してくれる姿がとても印象的でした。話好きで、パワフル!!銀幕スターを夢見ていた金沢の若大将は、浅野川沿いのこの店で、今日もお客さんとカウンター越しに軽快なトークを繰り広げている。

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