天から福が来るお蕎麦野路

No.01

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「山の妖精」に「畑の美女」??

全国を食べ歩き完成した 

天から福が来るお蕎麦!

大通りから住宅街に入った場所にある『めん工房 野路』さん。手書き風の看板が可愛らしく、昔ながらとはいえ、入りやすそうなお店の雰囲気にちょっとホッとするライター。手打ちそばが食べられると言う事で、落ち着いた大人な雰囲気なのだろうと心して入店っ!カラカラカラカラ(←引き戸)お邪魔しまーす!

(取材:絶メシ!いしかわ調査隊    ライター名:美緑トモハル)

遊び心ある言葉の数々
メニューに隠された人とのご縁

うわー!!だしの香り~っ!

「いい匂いですね~」

「そーけ?(そう?)」と対応してくれたのは、ほんわかとした雰囲気を持つ女将さん。

「ほんで何やった?なんも話せんわ~」と奥から優しそうな大将が顔を出す。

これぞ日本のそば屋さん!というような風情ある雰囲気の店内。飾り棚にはキレイに置物が並べられている。

ライター美緑
「早速なんですけど、野路さんの人気メニューを教えて頂いていいですか?」
森さん
「そうやね~。姫ご膳が良く出るわ。」
奥さん
「姫の割には大きくて。なんでも大きくしてしまうんや。
森さん
田舎者やから(笑)
ライター美緑
「これ2つ頼んでも、950円なんですか!?安い!」
奥さん

「平日だけの値段なんですけどね」

ライター美緑
えー!?太っ腹過ぎやしませんか!?これは通って制覇したいっ」
ライター美緑
「もしかしてこれで・・・天ぷら!?天から福が来る??ステキっ」
奥さん

「そうやー。でもたまに読めん人もおるげんて、当て字やからね。メニューの文字は、人にお願いして考えてもらったんやけど、本当にその人にはお世話になったわ。」

ライター美緑
「山の妖精に、畑の美女・・・」
森さん
「妖精はなめこが入っとって、美女は大根おろしで」
ライター美緑
「なるほど~。色白美人なんですね。面白い!」
46年の歴史を持つ野路。お店が始まってから軌道に乗るまでは大変だった。何かアイデアはないかと試行錯誤を繰り返していた時、奥さんが金沢のうどん屋さんに食べに入ったところ、そこのメニュー表記が少し変わっていて、「これだ」と思った。そして、それを考えた人を紹介してもらったが最初は断られそうに…。そこをなんとかお願いして縁が繋がり、野路のメニューや文字を書いてもらう事が出来たという。上品な店内を探すと、くすっと笑える箸袋を発見した。
ライター美緑
「これ。全部が回文になってる・・・」

来てくれたお客さんを楽しませようと、宝探しのように密かに書かれている文字。

箸袋。誰かに見せたい!と思い、ひとつ頂いてきました(笑)

全国を食べ歩いた先に出来たそばの味
守りたい気持ちと答えの出ない現実

ライター美緑

「そば屋さんを始められたきっかけは?」

森さん
「店を出す前に、いとこのお店がうどん屋さんやっとって。そこを手伝いながらだしの作り方を学んだりしとったんやけど、福井のそば屋さんに食べに行ったときに、金沢にはそば屋さんがないよねって言われて。そういえば少ないなと。その頃はね。だったらそば屋にしようと。」
ライター美緑

「そばの勉強とかしたんですか?」

森さん
全国食べ歩いたわ。山形にも行ったり。お店に来てくれてた全国をまわるうつわの行商人に“あそこのそば屋は美味しい”と聞いたら、自分の足で確かめに行く。行かんかったら、次にうつわ屋さん来た時に感想聞かれるからそれもあったんやけど(笑)」
ライター美緑

「46年の思い入れがあると思うんですが、後継者の方は」

奥さん

「長男がいるんですけど、そばアレルギーなので、違う形ならって感じかな。主人が体を壊した時にちょっと考えてたみたいやけど、私たちもそばが出来ない人に入ってもらってもね~。だから、いまはどうしようかなって・・・そば以外でってなると難しいもんで。」

ライター美緑

「まだ答えがでないんですね・・・」

奥さん

「息子はお手伝い出来てないけど、お嫁さんが中に入って手伝ってくれとるんや」

ライター美緑

「なるほど・・・。」

奥さん

「お客さんには、辞められたら、私ら行くところないわって言われて元気づけられてます」

森さん
「そんな嬉しい言葉に励まされながら、まだまだ頑張らんなんなって思っとるんやけど」

2人で守ってきた店で
年を重ねながら、人とのご縁にさらなる感謝を

野路には麺を打つ姿が見られるガラス張りとなった一角がある。

そこで森さんがそばを打ってくれることに!

ライター美緑

「均等に生地を伸ばすのって難しそうですね」

奥さん

「ほーや。私もお父さん何度か倒れたときに、店を閉めるわけにもいかんから見様見真似でやってたりしたけど、やっぱり難しい。ほんでも、一応お店に出せるくらいのものにはなるんやよ!」

・・・頼もしい。

打ったばかりのそばを、厨房に入って茹でる。

いつもの動作が体にしみていて、流れるような作業。

ライター美緑

「お母さんの担当は何ですか?」

奥さん

「あー。昔は天ぷらもやっとったけど、今はパートさんに任せとる。やることも多いし」

ライター美緑

「天ぷらって難しいですよね?」

奥さん

「ん?簡単や」

ライター美緑

「そーなんですか?私、うまくできません・・・」

森さん
「天ぷらは、うちの母さんが一番うまく揚げるわ」
ライター美緑

「やっぱり!」

森さん
「ほんでも、最初は全部わしが教えたんやぞ!」

そう心から誇らしげに言う森さん。

と、出来上がったそばを出してくれた!

ライター美緑

「うわー!美味しそう。。。なんだかキラッキラしてます。いっただっきまーす!!」

最初の一口・・・くぅぅー!!美味しいっ!つゆの味がしっかりしていて、でもくどくなくコシのある手打ちの麺と合います!ふっと抜けるそばの香り。最高です!どんどんと箸が進む進む・・・

あっという間に完食後は、そば湯を頂きました。少しとろみのあるそば湯。のどを通る温かさにおなかの中まで幸せが行き届きましたとさ。

 

ごちそうさまでした!!

 

ほっこりほっこり。

森さん
面白い商売やわ。疲れたこともあったけど。ここでこんだけ長い事できたってことが私らにとっての財産っていうか。これだけ周りが知ってくれて、長く出来る店ってなかなか無いかなって。」
何度か体を壊して休むことを余儀なくされた森さん。従業員もいたし、お客さんも待たせるわけにはいかないと、一人でもお店を開けていた奥さん。おかげさまの精神でここまでやって来たお二人の心意気がかっこよくて、本当に素敵でした。これからも美味しいおそばを作っていって欲しいです。ありがとうございました!
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