変わるもの、守るものがある店レストラン いこい

No.06

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先代の和食と、

2代目の洋食で、

3世代が訪れる店に。

大樋町の城北大通りに面し、昼時にもなれば近隣で働くサラリーマンやタクシー運転手、金沢星稜大学の学校関係者らで賑わいを見せる。創業55年のこの店、30年前に8台の駐車場スペースを店の入り口前に設置。少し狭いのはご愛嬌だが、縦列駐車にドキドキの絶メシ調査隊の寺田。スイスイ入ってくる常連らしき人たちの慣れた運転を見ると、思わず「すげぇー」と声が出てしまいました。

年季を感じる食品サンプルが
ショーケースにズラリ。

ライター寺田

天ぷらや丼などの和食からオムライスやハムエッグのような馴染み深い洋食もあるみたいですね。メニュー数も豊富ですな。食品サンプルは手入れが行き届いているようで綺麗(失礼)。なんというか、和と洋が混在する、なんでもあり!って感じが昔のデパートのようなイメージを彷彿させて、どこか懐かしい(失礼×2)。これ見てるだけでも楽しい。

(取材:絶メシ!いしかわ調査隊    ライター名:寺田尚人)

喫茶店からレストランへ

自動ドアの向こうには、明るく奥行のある空間が広がっています。カウンターを入れ40席。レジ近くには雑誌やコミックが綺麗に並べられています。「本日はよろしくお願い致します」と厨房から物腰柔らかな店主の山﨑聡さんと奥様の喜代美さんが出てきてくれました。

山﨑聡さん
山﨑喜代美さん
ライター寺田

こちらこそ、今日はよろしくお願い致します。店内綺麗ですね、とても55年も続けられているとは思えない。

聡さん

ありがとうございます。元々は『喫茶いこい』としスタートしたのですが、その雰囲気を残しながら10年に一度は改装をしながら店を続けてるんですよ。

ライター寺田

そうなんですか!(歴史を感じるなぁ~) 言われてみれば喫茶店の雰囲気も?

聡さん

雰囲気だけですけどね。内装は少しずつ私が洋風にしていったんですよ。女性の方でも入りやすいように。

ライター寺田
なるほど。では、いつごろ喫茶店から、レストランになったんですか?
聡さん

徐々に、ですかね(笑)先代である両親が喫茶店をはじめて、それから定食メニューなんかも提供していったんです。両親が和食を中心に提供してたんですけど、自分が洋食を増やして今の「いこい」になったんです。

ライター寺田
またどうして洋食を?
聡さん

若い方にも楽しんでもらえるようにしたかったんですよ。両親の代から来てくれていた人はもちろん、そのお子さんやお孫さんといろんな世代の人が同じテーブルで食事をしてほしいなって。

喜代美さん

だから家族で来てくれる人も多いんですよ。

聡さんの「やさしさ」から
増えて行ったメニュー。

元々は聡さんのお母様が喫茶店として店をはじめた『いこい』。当時サラリーマンをしていた聡さんのお父様も手伝い程度に店に立っていたというが、次第に得意だった煮物や魚を使った品を軽食として提供、人気が出てきたので本格的にメニューに加えていった。店も忙しくなったため、会社を辞め、2人で店を盛り上げていったのだそうだ。

ライター寺田
定食だけで20種類以上、モーニングセットも合わせれば70種類くらいのメニューがあるんですね。それにしても日替わり定食600円ってお手頃価格ですね。
喜代美さん
お客さんには学生さんとかも多いですから、なるべく安く。後は、ボリュームもあるからね。最近では嬉しいことに女性一人でも来てくれるんです。
聡さん
量が多いのは、昔からですね。価格もね、ほんとはあんまり変えたくないんですけどね。時代に合わせてしかたなく調整してます。増税とか、物価の高騰とか…。ちょっと前まで日替わりやオムライスは580円だったんですよ。
ライター寺田

いやいや、それでもありがたい価格ですよ。(ご主人! むしろ20円の値上げで大丈夫なのか…?)。モーニングを8時からやっているのも凄いですよね。

聡さん

仕込みのついでですよ。中々お客さんは来ないですけどね。それでも、朝ご飯を店でって人のためにね。あ、では早速、おすすめの「ポークソテー定食」おつくりしますね。

 

ライター寺田
ありがとうございます。お願いします!

聡さんの細かい気遣いのできる人柄が訪れる人の心を掴むのだろう。また「昔からボリュームがあるのは当たり前」と言えるのは、ご両親の働く姿を見ながら育ったから。簡単な手伝いはやっていたが特に店を継ぐ予定もなく上京した聡さん。東京の大学を卒業した後は、就職しサラリーマンをしていたが、親の願いもあり店を継ぐことを決意したそうです。

聡さん
25の時に帰ってきて、調理師の資格を取って両親と共に店に立ち始めたんですよ。まぁ、子供時代から店の手伝いをしていたのと、食べ歩きも好きだったのでこの仕事は違和感なくやれています。7年ほど前に父が他界してから、母とは3、4年位前まで一緒に厨房に入ってたんですが、体を壊してしまいまして。今は一人で調理をしています。

なるべく客を待たせず、
丁寧に。

国産豚を手早くたたき、丁寧に下味をつけ調理していく。昼時には次々と来るお客さんを出来るだけ待たせずに料理を提供。「日替わりだけで多い時は20~30食、それ以外も作ってるから大変ですよ」と聡さん。忙しい仕事の合間に来てくださる方へ、迷惑を掛けたくないという心遣いにも頭が下がります。

聡さん

料理は私が、盛り付けは家内が担当してます。

強火で一気に焼き上げ、余分な油は落とす。こんがり焼き色がついたら味付けはシンプルに、醤油に酒、砂糖などをつかい、素材の味を活かしながら仕上げます。

ライター寺田
味付けは先代から学ばれたんですか?
聡さん
そうですね。ただ両親もほぼ独学で(笑)。だから新しく加えていったメニューは、お客さんの声を素直に聞いて、いろいろ試行錯誤しながら追加してきました。
喜代美さん
お客さんの好みとかの要望にも出来る範囲で応えているんですよ。

そんな話をしている間に、男性を中心に人気があるという「ポークソテー定食」(1,110円)が完成。ご飯は河北郡の契約農家から取り寄せるこしひかり。つやつやのお米と肉厚でジューシーなポークを、空きっ腹が呼んでいます。なんと、漬物も自家製なんですって。

ライター寺田

食欲をそそる香りですな。肉もでかい!すみません早速ですがいただきます!

一口パクッと!

ライター寺田
やわらか~い。これ、肉食べたらすぐにごはんをかきこみたくなる!バクバクいける!
聡さん
ポークは味がしっかりと付くように小麦粉をまぶしてから味付けしてるんですよ。後は、隠し味にバターを使ってます。
喜代美さん
サラダも食べてみて。このオニオンドレッシングは自家製なんですよ。
ライター寺田

ではでは。さっぱりしてますね。でもタマネギの風味と凄いコクがありますね?

喜代美さん

でしょ。ニンニクやすりゴマが入って主人特製のドレッシングなんです。別で売ってほしいって声もあったの。嬉しいんだけど、中々手が回らなくてね。

ライター寺田
へぇ~。あ、すみません食べながらで。
聡さん
(笑)もう一品おすすめの親子丼あるんですが、作ります?
ライター寺田
ぜひ!

特製のドレッシングは、子供でも安心して美味しく食べられるようにと10年の歳月をかけて作った自信作だそうです。

いざ、丼をオープン!プルンと卵が揺れ、立ち上る芳醇な香りがたまらない「親子丼」(670円)

ライター寺田

おぉ、これは。卵黄がトッピングされていて、見た目もちょっと変わった親子丼ですね?半熟の卵がトロッと米と米の間にしみ込んでますね~。

聡さん

これは私が東京にいたころに出会ったものなんですよ。

 

具材には、鶏肉や卵のほかに椎茸、赤巻き蒲鉾などが使われています。数種類の削り節からとった出汁も特徴。この出汁は、隠し味としてほかの洋食メニューにも使われているようです。上にのる卵黄のまろやかな味わいも、丼に凝縮された食材の旨味を引き立てます。

ライター寺田

うまいぃ!これも凄いですね。具沢山で食感も豊か。さっきのポーク定食同様に箸が止まらないですよ。

喜代美さん
デザートにパフェ作りますね。
ライター寺田

パフェまであるんですね。それにしても、何でもありますね。

ドーンっと出てきたフルーツパフェ(640円)。私の顔が大きく、パフェのボリュームがイマイチお伝えできないのが残念!

ライター寺田
お母さん、これってサービスサイズですか?
喜代美さん

いつもこんな感じです(笑)。ほかにはバナナパフェとチョコレートパフェがあります。

聡さん
私はこれ、大変だから、実はやめたいんですよ。注文入ったら、アイス取り出して、クリーム絞って、なんてしてたら大変で。でも、先代からあるメニューだから、それを楽しみにしている人がいると思うとやめれなくて。
ライター寺田
思い入れのあるメニューなんですね。

ごちそうさまでした!

パフェを食べ終え大満足。さて、これだけのメニューと親子丼などの『いこい』独特のオリジナルメニューを継ぐ者がいるのか、気になる話を聞いてみた。

ライター寺田

聡さんが2代目ですよね。現在3代目はいらっしゃるんですか?

聡さん

3代目の予定はないですね。息子達がいるんですが、私としては無理してほしくないというか…。この仕事はハードですから(笑)仕込みして、厨房に入ったら料理を作りっぱなしで…。だからねぇ3代目は、わかんないですよね、この先も。

 

この仕事の面白さはもちろん、大変さも知る聡さん。時代と共に変化を加えながらも、守るべき料理やボリュームを変えないスタイルで続けてきた。昼時の客足は絶え間ない。店の駐車場は縦列駐車で、お客さん同士が声を掛け合っている光景も、この店ならではなのだろう。

今度はゆっくりとコーヒーを飲みに来ようかな。何度も足を運びたくなる、そんな魅力が溢れる一軒でした。

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