加賀のマザーテレサ現る!びっくりうどん

No.27

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加賀にそびえたつ40年変わらない看板の下

100円でうどんが食べられるお店が!?

ここはきっとパラダイス。

石川県加賀市。見たことはあるけど、入ったことはないという人も多い!?噂のお店、その名も「びっくりうどん」が今回のターゲットだ。かくいう、私もそのうちのひとりであった。これは期待が高まります!!いざっ!絶メシに会いに!

※価格は取材時のものになります。

(取材:絶メシ!いしかわ調査隊 ライター名:美緑トモハル)

いただいたチャンスがこれほど続くものなのか!?常連さんと交わす言葉と思いやり

そうそう、この外観。こんなに近くまで来たのは初です。

ライター美緑
「こんにちわー!!今日はよろしくお願いしますッ。」
橋階さん

「よろしくお願いします。今日は、いつもにないくらい暇なんです(笑)」

ライター美緑
「そうなんですか?私たちにとってはタイミングがいいんですが・・・」
橋階さん

「そうねー(笑)」

ライター美緑

「これは、明日の仕込みですか?」

橋階さん

「そう。カレーとね、こっちはお揚げさん。」

となりではボールいっぱいのネギを刻む娘さんが。週に2度ほど手伝いに来ているのだとか。カウンターには揚げたての海老天・・・美味しそう。

ライター美緑

「私、実は父の実家が加賀市なので、小さい頃によくこのお店の前を通っていて、ず〜っと気にはなっていたんですよ。」

橋階さん

「昔からこんな感じだし知らない人が見たらやっているかどうかも分からないよね。客観的に、第三者が見たら(笑)」

ライター美緑

「外観、本当に変わってないですよね!」

橋階さん

「そこら辺はほら。無駄なお金は使わない。材料をケチったりはしないけど、外側は、うん。お金はかけない。雨漏りさえしなければ。」

ライター美緑

「お母さんは何年このお店をやっているんですか?」

橋階さん

「もう41年目やね~」

ライター美緑

「今年で!すごい・・・どうしてうどん屋さんをやろうと思ったんですか?」

「うちの亡くなった主人が勤めてた酒屋のおかあさんにやらないか?って言われて。それまで子供たちを育てていたから、主婦だったんだけど、突然うどん屋になったの。」

ライター美緑

「なんの経験もなく!?その時は「やる」って二つ返事だったんですか?」

橋階さん

「(笑)無謀だね」

ライター美緑

「すごすぎる・・・(笑)」

橋階さん

「どうであれね、自分で選んだ人生じゃないの。」

ライター美緑

「だけど、やるかやらないかはちゃんと選んできたってことですよね。」

このお店をやらないかと誘われ決断したのは2度目の時だった。最初に誘われたときには子供たちもまだ小さく頼れる人が周りにいなかったことから断念した経緯があったという。橋階さんの旦那さんが亡くなった後も、酒屋のおかあさんに公私共にお世話になり、今でも付き合いをして頂いていると話してくれた。

価格設定に待った!やりくり上手にも程がある!?常連さんが通い続ける味と値段。

橋階さん

「だけどね、40年経ってもここでうどん屋をしているとは考えてもみなかった(笑)」

ライター美緑

「40年以上続くってすごいことですよね。」

橋階さん

「やっぱり、体が丈夫で元気だったからかな。病気してないから。」

ライター美緑

「大病もせず。それは気力からなんですかね?毎日お店をやらなきゃっていう。」

橋階さん

「いやぁ、もともと体は丈夫だったの。あとは、ちゃんと仕事して、ちゃんと食べて寝て、少し楽しみをして笑って過ごすってことが体にも大事だと思ってる。どんな人でもね。」

ライター美緑

「笑うことが体にもいいんですね~。あ、お店の名物の素うどん(びっくりうどん)が41年ずーっと変わらずに100円とお伺いしたんですけど、その名の通りびっくりしています・・・。仕入れの値段は変わっていると思うんですが、どうやりくりしてるんですか?!」

橋階さん

「食材のね、質は落とさずにできるだけ安く仕入れられるところを探してお願いしてる。値段は上げたくないし、質も下げたくないから、そういう努力はね。ネギなんかでも、時期によるけどご近所で地元のものを安く売ってくれる方がいて。」

ライター美緑

「助かりますね!昔からの知り合いの方?」

橋階さん

「そう。お客様なの(笑)その方も市場に出してるけど、採算度外しでうちには安く持ってきてくれて。長く続けて欲しいからって。ありがたいよね。」

ライター美緑

「その気持ちが嬉しいですね・・・あの大きな巻き寿司も100円なんですよね?うどんと食べても200円・・・。」

橋階さん

「そう。だから、年配の方なんかは、一人暮らしの方のお家に行く時お土産に持っていったりするのよ。お菓子よりも、巻き寿司だったらご飯作らなくていいから喜ばれるって。」

ライター美緑

「助かりますよね。コンビニだと250円くらいはすると思うほどの大きさです(笑)このお店はそのほとんどが手作りなんだとか?」

かんぴょうやお揚げは、昔ながらのザラメで炊く。その出来は、艶とコクが出て、市販のものとは風味がまったく違うという。うどんのトッピングで手を掛けてないのは卵ととろろ昆布だけ。肉もカレーも海老天も揚げもすべて手作り。こうやって手を掛けても、かんぴょう巻は1日で3本ほどしか出ないと笑う。それでも、自分で作ることによって、割安にはなるし、業者さんには1人で手間暇かけてそこまでするお店はないと言われるが、これでずっとやってきて、この味にお客さんが付いてきてくれているのが分かるから今更変えられないと。

このお店には40年間ほぼ毎日通い続けている常連さんがいる。ひとりの人生が垣間見れ、それは橋階さんにとっても自分の人生を明け渡している事にもなる。だけどお互いに40年、元気に顔を見ることが出来て嬉しい事だと教えてくれた。

ライター美緑

「明日からもまたそれが続いていくんですね・・・素敵な話・・・」

橋階さん

「常連さんにとっては、うどんだったからそれだけ続いたんだと思う。日本がお出汁の文化だったから。」

ライター美緑

「確かにそうかも知れないですね。お客さんは常連さんが多いですか?」

橋階さん

「あらかたね。だからその人の健康状態だったりね、家庭の中がいろんな状況で変わったりなんかは見える(笑)」

ライター美緑

「本当、みんなのお母さんですね(笑)」

橋階さん

「(笑)基本的にそう言う面ではお節介なんだと思う」

取材中もひっきりなしにお客さんが来店されていて、そのひとりひとりに声をかける橋階さん。帰るときには「いってらっしゃい!」夜勤明けだと分かってる常連さんには「おかえりなさい」「歯を磨いて寝るんだよ」なんて、まるで実家の母親のようなあたたかさだ。目を見て、言葉を交わすコミュニケーションを大切にしているのが分かる。

世界がみんなこんな風になればいいのに!加賀のマザーテレサ現るっ

橋階さん

「お客さんも私も、持ちつ持たれつ、お互い様だと思ってる。一方通行はないって。」

ライター美緑

「お母さんにとってのやりがいは、お客さんとの心のコミュニケーションですか?」

橋階さん

「ここまできたら多分そうだと思う。子供たちも大人になって親としての勤めは果たしたわけだし。近江商人の、三方良しって知ってる?自分良し(商売)、相手良し(取引先とお客様)、世間良しって。そうやって、世の中が回るようにしたいの。二方向じゃ回るって言わないじゃない?」

ライター美緑

「往復ですね。そんなことを思いながら毎日お店をやられてるんですね。」

橋階さん

「人ってね、あったかいもの食べると、なんか違うじゃない。よく寒い日なんかで丼出したりするとね、みんな両手で持って「あー母ちゃん。ぬくい(あったかい)」って(笑)うちは器も重たいけど全部陶器で出してるのは、温度が伝わるから。あと、熱いから気をつけてねって、声も掛けやすいし。」

ライター美緑

「一言添えられる!」

橋階さん

「そう。なるべく、言葉を添えてあげたいの。」

なんだろう・・・お母さんと話していると、とても落ち着く・・・

GUUUUUU。

ハッ!!!落ち着きすぎて、お腹が鳴りました。。

ライター美緑

「お母さん。お話の途中なんですが・・・私、お腹が空いてきました。」

橋階さん

「何にする?」

ライター美緑

「カレー天ぷらうどん頂きたいです~~~」

橋階さん

「食べて食べて!!今作るね。」

ライター美緑

「あと、このお稲荷さんとたまごのお寿司も頂いちゃいますね!そういえば、メニュー沢山あるんですね~」

橋階さん

「ないのよ。乗せる具材が、お肉と、カレーとえびの天ぷらと揚げと卵ととろろと。6種類しかないのを、ただ組み合わせてるだけなの(笑)」

ライター美緑

「なるほど。メニュー表がたくさんあって、見た目いろんなうどんがあるように思いました。その組み合わせでここまで広がるんですね〜」

橋階さん
「最初は単品メニューばっかりだったの。でもそうするとお客さんが、天ぷらうどんに卵入れて欲しいとか言いづらい人もいるじゃない?だからメニューにしてしまったの。そうすれば頼みやすくもなるし。」

優しい心遣いだ・・・そうこうしていると、あっという間にカレー天ぷらうどんの到着。提供までの時間が早い!!

うわーーーー!!いい香り~(よだれが)

では早速ですが、頂いちゃいますねっ

おおおおお。

うどん屋のカレーって本当に美味しいんだよなー・・・こちらのカレーは玉ねぎの甘みもあって、お肉のつぶつぶも感じられる。

海老天、うんまっ♪カレーうどんに全然負けてない!風味が最高なんですけど~ずずずずずずっと、いつもは飲み干さないスープを平らげました。

ライター美緑

「お母さん、天才っ。」

ザラメで炊かれた稲荷ずしと、ほんのり甘くてやさしい卵焼きは家庭の味。確かに濃い味ではないけれど、とても後引く味で何個でも食べられそう。。。ごちそうさまです!!

「あたりまえ」が「当たり前」ではない幸せ。味だけではなく心を大切にしてきた重みがここに。

ライター美緑

「美味しかった!!」

橋階さん

「よかった(笑)」

ライター美緑

「このザラメ使ったり手作りだったりここでしか食べられない味をどうにか残していきたい、絶やしたくないって思いは?」

橋階さん

「そうね・・・もったいないと思う。」

ライター美緑

「娘さんが手伝いに来てくれてますけど、後を継ぐみたいなことは?」

橋階さん

「娘は、矢面に立つっていう性分でもなくて、なかなか難しいみたい。でもそれはそれでいいと思ってる。うちのうどんは私のおしゃべり付きみたいなところもあるから。たいそうな事をしてるわけじゃないんだけど、うちに来てあったかいうどん食べて、ほんの少しでも顔が上に向いてくれたらそれでいいと思ってる。背筋が伸びたら、見える景色が違うんだよね。そのお手伝いをほんの少しでもできたらいいなって思いながらしてきたの。うどんの作り方なんかは教えられるんだけど・・・うどんだけ出せばいいって問題でもないから。難しいかなって。」

ライター美緑

「心意気とか、お母さんの想い、このお店をやる意味みたいなものを丸ごと継いでほしいってことですよね・・・」

毎日お店を開いていると、訪れる常連さんの中には病院帰りの方がいたり。そんな時には「良かったね!」と声を掛ける。「入院せず、お腹が空いて、メニューを見て、自分の好きなものを温かいまま食べられるじゃない!」と。そう言うあたりまえの事が出来る幸せを伝えてあげたいんだと言う橋階さんの言葉には愛が溢れている。

ライター美緑

「昔からそんな考えなんですか?」

橋階さん

「・・・いや、そんなことはなかったと思います(笑)元々の性分はそうだったと思うんだけど、お客様に育てていただいた部分もあるし、年齢を重ねて育った部分もあるし。だけど、どれだけ時間がかかろうとも育ったんならそれでいいの。たった階段1段でも登ったんならいいの。ゆるゆるでいいの、その人その人でね、かまわないのよ。」

ライター美緑

「いい話ばかりで心が温かくなりました。」

「幸せハードル」を大切にしている橋階さん。それは、人と比べる人生ではなく、低めでいい、自分が小さな幸せを感じられる設定をすることが嬉しさの元を見つけられるコツなのだと。今年で73歳。その温かい心遣いはうどんと同じぬくもりが、これでもかと伝わってくる。これからもますます元気に!たくさんのお客様の心に、お腹に、温かさを提供してほしいです!ありがとうございました!

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