ここはまるで実家!?さか井

No.28

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地域に愛されて46年!

金沢の観光地付近で見つけた

人気の和風洋食屋

金沢市尾張町。老舗も多く最近では若者が集うようなおしゃれなお店も混在するこの町にも絶メシがあるとのタレコミが!!これは行くっきゃないでしょう!?と颯爽と車に乗り込みいざ、出陣!

(取材:絶メシ!いしかわ調査隊 ライター名:美緑トモハル)

携帯のナビを頼りにお店に到着。おぉぉ。懐かしのサンプルが飾られたショーケースがあるじゃないですか!コレコレ~!!今回はどんな出会いが待っているのか・・・ドキドキしながら引き戸の扉をそっと開けた。

ライター美緑

「・・・こんにちは~」

目の前に広がったのはカウンターで食事を楽しんでいるお客様ご一行。約束の時間よりも少し早めに着いてしまったので、邪魔にならないよう奥でジッとさせて頂くことに。店内は入り口にカウンターがあり、その奥にはお座敷。家族連れでも落ち着いて食事が出来そう。石畳の床が昭和の香りを残している。

ライター美緑

「今日はどうぞよろしくお願いします!!」

由記子さん

「話は、あちらに聞いて下さいね。」

ライター美緑

「いやいや、お母さんも一緒に!ご夫婦なんですよ・・・ね?」

由記子さん

「違います違います!私、2時で終わりなので帰りますよ!」

ライター美緑

「え!?従業員さん??」

由記子さん

「そうそう。」

ライター美緑

えーーーー!!?

驚いた・・・タレコミ情報がこれほどまでに間違っていたことがかつてあっただろうか?タラバガニがカニではなくヤドカリの仲間だったと知った時ほどの衝撃が走った・・・。実はこの時、美緑をはじめその場にいた多くの絶メシスタッフが、由記子さんの冗談だと思っていたのだ・・・思い込みほど厄介なものは無い。そうこうするうちに、店主の手が空いたので早速お話を伺った!

老舗が集まる町にお店を構えた新参者は、商売が難しい!?

坂井さん

「なんの話すればいいんかな?」

ライター美緑

「よろしくお願いします!ではお店について教えてください!“さか井”さんは、和風洋食のお店なんですよね?なぜ和風洋食屋さんを始めようと思ったんですか?」

坂井さん

「中学卒業してすぐの頃、うちの兄貴が結婚して、そこの家がグリルオーツカさんの親戚だったから、そのご縁でオーツカさんで仕事させてもらう事になって。」

ライター美緑

「洋食の老舗店に勤めていたんですか!!」

坂井さん

「そうそう。」

ライター美緑
「そんな立派な洋食屋さんから、どういった経緯でご自身のお店を出そうと思ったんですか?」
坂井さん

「グリルオーツカさんにはもう12年勤めたから。そろそろそんな時期かなと思って。」

ライター美緑

「なるほど。暖簾分けで独立っていう自然な流れだったんですね。」

実は由記子さんも坂井さんと同じ時期にグリルオーツカさんに勤めていた。開業した当時、坂井さんの奥さんが子育てでお店を手伝う事が出来ず、人を探していた時に元同僚の由記子さんに声をかけたのが始まりだったそう。それからずっと、あうんの呼吸でこのお店を続けてきた。長年の付き合いはとても自然で、ご夫婦に間違えられるのも納得かも知れない。

ライター美緑

「お客さんは常連さんばかりだとお伺いしましたけど、そのお客様に支えられてここまで続けられたということですよね~。」

由記子さん

「ほんとにね、近所の人らも身内みたいな人ばっかり。いい人ばっかりやね。どっちがお客さんかわからんってくらい。」

忙しい時には、お客さんが配膳を手伝ったりなど、支えてくれていた。今でもそうしてくれた人たちは常連さんでお店に通ってくれている。「なかなかいい所です」と笑顔で由記子さんは言う。

ライター美緑

「坂井さんは志賀町出身で、由記子さんは七尾出身。ゆかりのないこの地に、なぜお店を構えたんですか?」

坂井さん

「やっぱりね、金沢でやりたい!と思って探していたらここが空いていて。」

ライター美緑

「タイミングが良かったんですね~。」

坂井さん

「でも、最初ここに来たときは、周りから『ここは付き合いにくいよ』って言われんです。尾張町で商売するのは難しいって。この辺りは老舗ばかりだから受け入れてもらえないよって。」

ライター美緑

「なるほど。老舗の繋がりがある中で、新参者が入ってくるとは!?という感じですかね?」

坂井さん

「まあ、そんな感じ。」

ライター美緑

「実際、ここに来た時にはそんな雰囲気は感じました?」

由記子さん

「最初はやっぱり少しだけ感じたかな。」

坂井さん

「近所の人は何年もつかね~って言っとったからね。」

ライター美緑

「えー!?でも気づけばもう何十年と営業していた・・・それはこの地域のみなさんにも認められたということですよね!?」

坂井さん

「そうやね。ここに来て10年程したくらいからかな、こちらが困ったら助けてくれるようになって。当時ご近所にあった料亭の方がね、奥にあるテーブルやらなんやらって全部揃えてくれて、世話もしてもらったわ。」

由記子さん

「ここのカウンターの椅子とかは別のお客さんが全部揃えてくれたの。」

ライター美緑

「うわ~。人に恵まれてる!これは坂井さんたちの人柄ですね!!」

坂井さん

「いやほんとありがたいよね。皆さんにここまで支えられて来たんです。いいのにしてもらって。」

ライター美緑

「地域の人たちと、お互いにいい関係性が築けたってことですよね。素敵!!」

【穏やかな店主の対応はまるでお客さんの実家!?変わっていく時代と共に、受け入れてきた要望

ライター美緑

「その当時、洋食屋さんは多かった?」

坂井さん

「そんなに無い時代やった。」

ライター美緑

「そんな時代にお店を始めて、お客さんの反応はどうだったんですか?」

坂井さん

「洋食はみんな好きやったね。この周辺は会社も多かったから、当時から割とお客さんは来てくれてた方だと思う。」

ライター美緑

「この辺りの時間の流れを見てきていると思うんですけど、やっぱり当時と比べると変わりました?」

坂井さん

「変わった変わった。当時あった会社やお店も駐車場になったりね。開店当初はこの店も座敷はなくてカウンターだけだったから毎日開店と同時に満席になってね。」

当時、席の回転数だけでも3回転は当たり前で、他にお弁当の配達が1日に40~50はあったと言うからよほどの忙しさであることは容易に想像がつく。今でもお弁当の注文は可能で、それを知っている常連さんが注文してくれるそう。宣伝などしていないから、知らない人も多いのだとか。

この機会に、ぜひ知っておいて貰いたい!!1個800円
絶メシあるある聞かれたらこれを言いたい!!店内飲食よりもお弁当安くしがち!!
・・・ランチは850円なので単純に驚きです・・・(笑)

ライター美緑

「毎日ランチのメニューが違うとお聞きしたんですが、常連さんが来やすい理由でもありそうですね。では、ランチ以外で人気のメニューは?」

坂井さん

「うーん。ハントンライスかな?」

ライター美緑

「昔からハントンライスは人気だった?それとも時代とともに?」

坂井さん

「40年代が一時期ピークになって。このお店をオープンさせた当時はやってなかってん。でも新幹線が通ってから、観光客の方が多くなって、それで。」

ライター美緑

「わりと最近なんですね!?」

坂井さん

「B級グルメが流行ったやろ?それでみんなハントンハントンって。」

ライター美緑

「地元の人は?」

坂井さん

「地元の人はあんまり食べん!(笑)あと、量があるから女性はあんまり食べんね。」

ライター美緑

「そんなに?」

由記子さん

「食べたことない?」

ライター美緑

「ハントンライス自体は食べたことあるんですけど・・・食べたいです!作っていただいてもいいですか・・・?」

坂井さん

「そしたらハントンライス作るね。」

サっと奥の厨房へと向かう坂井さんの後に続いて厨房を覗くと、キッチンがピカピカ!!使っているフライパンは鉄。聞けば、50年使い続けているというが全くそんな風に見えない。きちんと手入れをすれば一生ものだそう。知らなかった・・・掃除が行き届いている厨房は毎日1時間掛けて掃除をしているのだとか。素晴らしい…

調理をしている坂井さんに、ふと、質問してみた。

ライター美緑

「料理、楽しいですか?」

坂井さん

「楽しいね〜。」

長年料理を作り続けて来られた秘訣は、この短い一言に凝縮されている気がした。

そしてあっという間に出来上がる料理。

由記子さん

「あったかいうちに食べてくださいね。」

ライター美緑

「美味しそう~!!ではお言葉に甘えて頂きます!!」

確かに少し大きいサイズ上に乗っているのは白身のフライと、エビフライ!贅沢~&サックサク!!たまごはふわふわトロトロでほんのり甘く、中のケチャップライスはとてもさっぱりでもコクがあってスプーンが進む進む・・・

美味ッ!!(ウマッ)
ハントンライスの脂っこさが感じられない上品な味の虜になりました(涙)

ライター美緑

「ヤバイ!めちゃくちゃ美味しいです!!」

坂井さん

「ありがとう。」

夜の営業時には、メニューにない料理を出すこともあるという坂井さん。常連さんが鍋を食べたいと言えば準備し、カニを食べたいと言えば準備し。それには予約が必要だが、そんなわがままを聞いてくれる洋食屋さんがあると言う事に驚いた。お客さんにとっては実家のような存在なのかもしれない。なんて、贅沢な実家!!(笑)

常連さんが個人的にネットで写真まで載せてクチコミを投稿してくれたらしく、それを見つけて海外のお客さんが来たことも。すごい宣伝効果だ!

愛されるお店の行く先。店主が決めたカウントダウン

ライター美緑

「後継者の話になるんですが、お子さんは、このお店の後を継いだりはしないんですか?」

坂井さん

「しない。全然違う仕事しとるからね。」

ライター美緑

「でも自分が頑張って創りあげて来たこのお店と味がなくなるのは、寂しいとは?」

坂井さん

「そんなないね〜。私はお店しとるのが楽しいけど・・・子供は違うからね。」

ライター美緑

「そうですか…でも、常連さん達は寂しいと思いますよ。」

坂井さん

「目一杯やって、あと5年やね。」

ライター美緑

「え!?短い!!まだまだできますよ!!」

坂井さん

「今73才で、いずれはやっぱり動けんくなる。料理だけなら出来るかもしれんけど、荷物持ったりとか出来なくなるし。」

ライター美緑

「もしもの話ですけど…今、後継者になりたいですって人が現れたら?」

坂井さん

「それはいくらでも(笑)。でも、言われたらやね。どうしても残したいみたいな気持ちがないから。」

ライター美緑

「そうなんですね・・・あと5 年・・・出来るなら年数を決めずにとことんやって欲しいです。」

坂井さん

「そうですね~(笑)」

良く来る常連さんたちは座る場所が大体決まってきているらしい。それは落ち着く定位置であり、人の回帰本能なのだろう。常連さんたちにとってこのお店はあって当たり前の場所なのだということが、話の端々で感じられた。
「ただ一生懸命に毎日仕事をこなしてきたから、苦労を感じる間もなかった」と話す坂井さん。話を聞いていると人の固有名詞が多く出てくる。そんなところに、一人一人のお客様と真正面から関りを持つことを大切にされているんだろうなと感じることが出来た。
これからも元気に地域に愛されるこの「さか井」を続けていって欲しいです!ありがとうございました!!

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