枯れ松葉と釜戸で炊き上げる絶品ごはんおむすび 銀のめし

No.26

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地域の昔ながらの味を再現!
まさにここでしか味わえない匠の味、
おむすび専門店に突入!

加賀市大聖寺。聞くところによると、ここでは枯れ松葉「こっさ」を燃料に、かまどで炊いた「こっさ飯」と言われるご飯でおむすびを出してくれる人気店があると言う。どんどこ海に向かって走る田舎道。冒険にでも出かけるのかと思う道なりの先に突如現れたのは、可愛らしいおむすびのオブジェをたずさえた、暖簾が風になびくすっきりとした店構えの「おむすび 銀のめし」さん!!
ってなわけで!早速、入店です。

(取材:絶メシ!いしかわ調査隊 ライター名:美緑トモハル)

おむすびの具材はほとんどが手作り!?店内までも手作りという愛情あふれる一面にほっこり。

ライター美緑
「こんにちは~!ん?炭?のような香りがしますね・・・あ!今日はよろしくお願いします!」
滋さん
「はいはい」
ライター美緑
「店内、とてもお洒落ですね。」
滋さん
「そう?そんなことはないと思うけど。」
ライター美緑
「こちらのお店は始められてからどのくらい経つんですか?」
滋さん
「平成18年からやから・・・15~6年かな?」
ライター美緑
「ほ~!またどうしておむすびやさんをやろうと思ったんでしょう?」
滋さん

「きっかけは…元々やっていた繊維業が、時代もあってうまくいかなくなってきたもんで、これじゃどうにもならんなと。 で、何かせないかんという事で、今から20年程前かな。近くにある竹の浦館の理事長をしていて、地域の活性化をしていかんなんと。そこで、この辺で昔から『こっさ飯』を食べていたよねという話が出てね。」

ライター美緑
「子供の時はお家で『こっさ飯』を食べてた?」
滋さん

「母親がね、炊いとったから食べとった。それを「今」やってみんか?と。で、面白いなと思ってやっては見たものの、最初はうまくいかなくて。でも何度となく挑戦したところで、ようやくうまくいくようになってね。それで子供たちに食べてもらった。」

ライター美緑
「おむすびにして?」
滋さん

「そうそう。みんな喜んで食べてくれて、こんなに喜ぶんかな?っていうくらい。それ見たらこれはどうにかなるんじゃないかと。形に、商売になるなと。そこからやね。」

そこで滋さんは、車庫を改装しようと思い立ち、業者さんとともにこのお店を作り上げた。店内中央にあるテーブルにタイルを貼ったり、当初は壁紙に和紙を使用していたが釜戸を使うため、すすがついて真っ黒になってしまい壁も自分で塗ったそう。店内を見回すと滋さんお手製のものがどんどん出てくる。ほんわりと灯す明かりは娘さんチョイス。お店の雰囲気に合っている。
ライター美緑
「なるほど。店内も手作りが多いみたいですが、おむすびの具材も手作りとお伺いしました!」
滋さん
「ほとんど、手作りかな?ベーコンとか。」
ライター美緑
「べ、ベーコン!?」
滋さん
「味噌も。へしこも・・・」
ライター美緑
「へしこ!?手作りのへしこって初めて聞くんですけど・・・!!自家製の!?」

ベーコンを作り上げるには2週間程度の時間を要する。
そして鯖のへしこが出来上がるまでにはなんと・・・約1年半・・・!!!
食べるときには一瞬なのに。。。

才能が開花!本能から来ている天才肌の味の匠とはこの店主の事である。

ライター美緑
「飲食の経験がないとおっしゃっていたのに、どうやって・・・」
滋さん

「もともとは竹の浦館でへしこを作って売ろうと。で、美川のあら与さん(お店の方)に来てもらって教えてもらいながら作とったんや。で、そのレシピを元にオリジナルが出来ていった。」

ライター美緑
「才能が開花しちゃいましたね(笑)」
滋さん

「ほんと美味しく出来て。でもそうやってやっとたんやけど、こんな時代になってしまって、売れんくなってきたし、竹の浦はやめてしまって。でも、せっかく教えてもらって自分たちでつくれるようになったのにもったいないなと思って。私が、もう一回いちからやり直そうと、今、やっとるんや。」

ライター美緑
「オリジナルのレシピですよね。誰かに教えたりは?」
滋さん
(首を振る)
ライター美緑

「秘密ですね(笑)おいしすぎて(笑)ちなみに、お父さんが思うおむすびの人気ランキング教えて下さい!!」

滋さん

「やっぱりまずへしこかな。それから、なんかないですか?って聞かれたら、一番高いのを(笑)」

ライター美緑
「一番高いのって言うと?」
滋さん
「ベーコンや(笑)」
ライター美緑
「(笑)そりゃあオススメしますよね。もうひとつは?」
滋さん
「味噌。これもまたおいしい」
ライター美緑
「どんな風に作られてるんですか・」
滋さん

「味噌でもね、『まちかね』は、まず普通に田舎味噌を作るんですけど。作る前に、おからとこうじを木綿の袋に入れて、味噌桶の底に仕込んどいて、味噌を作ると、味噌が出来上がるまでに1年かかって。食べ終わるまでに一年かかって、ようやく『まちかね』に辿り着く。」

まちかね、とは「お待ちかね」から来ているそう。
ライター美緑
「貴重な味・・・手間も時間もかかってるんですね」
滋さん
「発酵食品というのは暇を惜しんでは作れんのや。」
ライター美緑
「時間を待つことが仕事になってくるんですね。」

奥さんは金沢市出身で、金沢の実家では自家製の味噌を作るときに一緒に「まちかね」を作っていた。そのなんとも言えない味に心が奪われた滋さんは、自身が味噌を作るようになったら必ず作ってみたいと思い続けていたのだそう。しかし、竹の浦館での様々な試みがあるまでは、味噌もへしこも作ったことはおろか、包丁も握ったことがなかったという・・・。

滋さん
「わたし、いいとこの子やから(笑)」
ライター美緑

「よくそれでおむすびのお店出そうと思いましたね(笑)やってみたら何でもできちゃった!?そのいいとこの子が、未経験のままお店を始めてかなり苦労したのでは?」

滋さん
「好きでやっとったから、苦労はせん!」
ライター美緑
「お!!ではオープン当時からお客さんは来てくれていた?」
滋さん
「全然・・・」
ライター美緑
「え!?」
滋さん
「インスタなんかを始めてからやね。お客さんが増えたのは。」
ライター美緑
「じゃあそれまではあまり知られてなかった?」
滋さん
「そうやね~。だからここ数年かな。」
ライター美緑

「クチコミで広がって増えていったっていう事は、味が本物だったって事ですよね~」

滋さん
「そうや!!(笑)」

なんともまぁ、なんて無邪気と言うか可愛らしい方と言うか。
滋さんがふっと出す笑顔が本当に素敵すぎて、絶メシ隊は皆、心を掴まれていました(笑)

食事には作り手の愛情が込められている。口にした瞬間に誰もがトリコになる味。

印象深かったお客さんの事を聞いてみた。それは、マイクロバスで四国からツアーに来ていた団体さま。ネットでお昼を調べて美味しそうな店があると、高速を降りてわざわざ来てくれた。総勢20名ほどの旅行客が、バスの中で食べるおむすびを買って帰っていったそう。
話はそこで終わらず・・・なんとも美味しいことに車中で気付いたツアーの皆さんは、翌日にまたもや高速を降りて再び訪れ、2日に渡りこの広いとは言えない店内には人が溢れていたのだとか。

滋さん
「本当に嬉しかったね。あんな嬉しい事はなかった。」
ライター美緑

「四国帰ったら食べられない味ですもんね~絶対食べたかったんでしょうね!!
私、こっさ飯を炊いている所が見たいんですけど、これから明日の仕込みがあるとか?」

滋さん
「そうやね。今から炊こうか。」

釜戸の前に腰を掛け、左手側には「こっさ」が山盛りに置かれている。
滋さんが作業をする頭上には、かわいらしいひょうたんが。

お母さん
「あれ、うちの前で作ったひょうたんや。」

ひょうたんまで手作り(笑)
釜戸に火が入り、「こっさ」が中で勢いよく燃えている。

店内には何とも言えない香ばしさが充満し、空いている扉からは秋の風が入ってくる。
なんと心地いい時間なんだろう・・・思いっきり深呼吸したくなる。
なんだか子供のころを思い出す匂いにたまらなくなった。

火力の強い「こっさ」だと2升のお米が13分で炊きあがるらしい。おお!!
炊きあがった「こっさ飯」はつやっつや!!

もう私、我慢できませんッ。滋さん!おいしいおむすびいただきたいです(涙)

滋さん
「何作る?何でも作るよ。」
ライター美緑

「じゃあ、先ほどお伺いしたランキングの、鯖へしこと、ベーコンと、まちかねを!!」

オーダーが入るや否や、3人はサッと作業に入る。
テキパキと流れるような動きは毎日のチームワークの良さが感じられる。

当時、滋さんの奥さんはお店をオープンさせることは反対だった。包丁も握ったこともない自分の夫が出来るわけがないと。ただ今は、滋さんの頑張る姿を隣で見ていてまだまだ続けてほしいと思っているようだった。お互いの空気を感じている3人は、とても素敵な親子だなーと静かに眺める美緑の前に、トンッと現れたのは、待望の「こっさ飯」のおむすび!!
あぁ。至福の時とはまさにこの事。

たまらずに、いただきますっと頬張りました~
!!!ほわっほわ!!なんだこりゃっ!
ひとくち噛むと、ほろっとお米がほぐれて口の中に広がる風味・・・
お米の粒がしっかりと感じられ、噛むほどに甘みが増します!!感動。。。

これはしあわせだーーーー!!!
この味に出会わせてくれたことに感謝!
そして冷めても美味しく食べられるのが、こっさ飯の特徴なのだとか。
お土産に持って帰ろう・・・(笑)

店主の想い。「こっさ飯」だからこその味の継承の難しさとは・・・

ライター美緑

「ごちそうさまでした!いやぁ、最高でした~ここでしか出せない味、想い入れのあるこんなに美味しい味を作られてて、この大切なお店を次に繋げたいとか、味の継承や代替わりの事なんかは、どう考えてるんですか?」

滋さん
「うん。しっかり、覚えてやってほしいな~と思ってるけど・・・(娘さんをチラ見するお父さん)」
ライター美緑

「視線が・・・(笑)でも、滋さんからしたらそうですよね。これだけ色んなオリジナルの味があって、銀のめしさんでしか食べられないものがあるじゃないですか。それはお客さんだって、ずっと続いてほしいし、味の継承が出来るならって想いはあると思いますよ、ね(と、娘さんに視線 笑)」

滋さん

「でも続けていこうとしたら、こっさからとってくるのに、山にいって集めることから始めないかんわけや。これって大変な労力なんやわ。それを無理やりって言うわけにはいかん。」

子供を想う親心が垣間見れる。大変なことを背負わせたくはない。それは親の愛情でもあるのだ。

こっさ飯をこの地域にまた根付かせたいと言う想いはある。お金では買えない技術の継承についても考えてしまう。だからといって、そう簡単ではない事は確かで。以前、こっさ飯を教わりたいと福井から女性が訪ねて来てくれた時にも、惜しみなく伝えようとは思ったが、やはり燃料となる要の「こっさ」をどう集めるかで、話はスタート地点に戻ってしまったこともあった。

ライター美緑
「ここまで続けられた、やりがいとは何ですか?」
滋さん
「やりがいは、お客さんの美味しかったという顔。特に子供さん。」
ライター美緑

「最初に心が動いた子供たちの笑顔が、今でも原動力になっているんですね。そういえば店名なんですけど、銀しゃりから来たんですか?」

滋さん

「最初は金にしようかな?って。でも、1番の「金」っていうのは偉そうに感じるから、1ランク下の銀にしようと。それで、金を目指そうと。」

ライター美緑

「なるほど~!なんて素敵な名前。。安易だった私の考えが恥ずかしいです・・・これからも長く続けてくださいね!」

滋さんたちの親の代から受け継いだ思い出の味がこの銀のめしさんの味のベースになっている。
思い入れのある味というものは、口にした私たちにも伝わり、心まで温かくしてくれるのだなと心底感じさせていただきました。
もうすでに、滋さんのおむすびは「金」になっていると私は思っています。
美味しいおむすびをありがとうございましたっ

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