金沢ジャジャメンが食べられるお店おたふくや

No.32

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石川県民にもあまり馴染みのない「金沢ジャジャメン」が食べられるお店「おたふくや」!金沢で有名なうどん屋さんに店名が似ているが??

金沢市吉原町に、長年続いている老舗があるという。その名は「おたふくや」さん。 金沢では似たような名前のお店が存在しているが、もしかして...パクりましたか?? その真相を探るべく、いざ、潜入!!

( 取材: 絶メシ!いしかわ調査隊 ライター名: 美緑トモハル)

店主は2代目。歴史が感じられるお店の入り口には年季の入ったショーケース。 紛れ込んでしまったか!?灰色の世界

お店に着くや否や目についたのは、これぞ!!絶メシ!?「何を食べようかな?」と覗いたショーケースの先は、全てがグレー。ラーメンなのか、ソバなのか…もはや瞬時に区別がつく者はこの世に存在しないだろう。ここでひと盛り上がりは確実だ。店内もグレーだったら走って逃げよう。全力で。仕事なんて知ったこっちゃない。そう心に決めて、扉を開けた。

ガラガラガラ…

ライター美緑

「こんにちは…今日は、よろしくお願いします…。」

清さん

「はい。」

…よかった!!色がある!!しかもなんだか居心地がいい。例えるなら、「祖父母の家」のようだ。全力で甘やかしてくれそうな安心感…。しかも店主はやさしそう。すぐに仕事モードに突入した。(えらいぞ、ミロク!自画自賛!)

清さん

「よろしくお願いします。いやー、寝不足やさかい。」

ライター美緑

「寝不足?昨日忙しかったんですか?」

清さん

「ええ忙しくて、昼食べたのは4時過ぎ。」

ライター美緑

「ええ!?」

清さん

「お昼食べれん時もあるよ。」

ライター美緑

「本当に!?」

清さん

「うん。でも、なんもない日もあるし。」

ライター美緑

「あー…そうですよね。毎日わかんないですよね。」

ここでミロクは悟った。ははーん、このお店。さては…お客に愛されているな!?と。

ライター美緑

「おたふくやさんは何年やられてるんですか?」

清さん

「創業62年やね。元々は、この人(姉)の旦那さんが、博労町のお多福で修行して始めたお店なんやけどね。」

ライター美緑

「お姉さんの旦那さんがお多福さんで…だから店名が似ているんですか?」

美代喜さん

「それが、お多福さんで修行していたんだけど、もうちょっとで10年ってところでね…それで"や"がつい「おたふくや」になったんや。」

ライター美緑

「ん?どういう事ですか?」

名前が似てるのは、暖簾分けだった!!でも…微妙に違うのはなぜ?

実はお多福では10年の修行を経て「暖簾分け」が許されるらしいのだが、先代の出島留次さん(美代喜さんの旦那さん)は、その10年を待たずにこの店を始めたのだ。あと少しだったこともあり、「や」をつけての「暖簾分け」で許可をもらい今に至るのだそう。

ライター美緑

「それで62年やられてる。清さんが旦那さんから変わられたのはどういったいきさつで?」

清さん

「このお店を開業後、8年程経った時に、34歳という若さで亡くなってしまって。当時はまだ17、8だったんだけど、姉ひとりだとやっぱり大変で。それで、別のところに働きに行ってたのを辞めてこのお店に入ったんです。元々、中学の時からお店が忙しい時には手伝っていたから。」

ライター美緑

「学生の時から手伝っていたんですね。だから、そこはスムーズだったんですか?」

清さん

「そうやね、知らないと出来ない。」

学業も大事!家の手伝いも大事!! 学校を休んで手伝いのはずが、なぜが違う形で登校することに…

ライター美緑

「メニューいっぱいあるじゃないですか。徐々に増えていったんですか?」

清さん

「昔から結構あったけど、自分らでこう色々開発していって増えたのもあります。」

ライター美緑

「開発!どのメニューが人気ですか?」

清さん

「ジャジャメンを頼まれる方は多いかな。」

ライター美緑

「ジャジャメン…。」

この時のミロクの頭の中には、盛岡のジャジャ麺、はたまた韓国ドラマに良く出てくる真っ黒いジャジャ麺を想像していたが、実物は全く違っていた…真相は…後半へ続く。

ライター美緑

「中学生でお店を手伝うって、大変だったんじゃないですか?」

清さん

「まあ、店が忙しかったからね。そんな忙しい最中に姉が妊娠して、お腹も大きなってきて、手伝ってと。その頃は、旦那さんの方の兄弟の子も手伝いに来てくれとったから3人でやっていましたね。」

ライター美緑

「それは学校が終わってから?」

清さん

「それがある時、学校休んで手伝っていた日に、お店に中学校から出前が入って。『あらーっ』と思ったけど、仕方ないから職員室に配達に行ったんです(笑)」

ライター美緑

「!?怒られませんでした?」

清さん

「で、先生たちから「お前、今日学校休んで何しとるん?」って。『あ、すいません、今日はうちの仕事です』と。そしたら、校長先生も担任も『まぁいいやろ、頑張れや』って(笑)」

ライター美緑

「えー!今だったら怒られそう(笑)いい話ですねー!」

清さんの中学では、お昼は給食ではなくお弁当だった。姉が忙しくてお弁当が作れない時には、旦那さんが昼時、学校に出前を届けてくれた。冷やかされるのかと思いきや、周りのみんなは「今日はなんやー?カツ丼かー?」と。何とも平和な時代であった。

来られるお客さんは常連さん多数! 創業から変わらない店内に懐かしさが溢れ出す。

ライター美緑

「当時からお店はこの場所ですか?」

清さん

「ずーっと、変わってないです。旦那さんの意思を継いでやっとるから、あんまり店も触っとらんし。一回、壁紙とかは張り替えたけど、それくらい。」

ライター美緑

「それだけ変わらないとなると、昔から通われている方は、当時を思い出して懐かしいっていうんじゃないですか。」

清さん

「そうやね。と、思う。子供の時から通っているって人なんかは、もう所帯持ってね。たまに来てくれるね。」

ライター美緑

「コロナになって、客足ってどうでしたか?」

清さん

「1回ちょっと人が減ったけど、今はまた回復してきたかな。コロナでも来てくれる人はちゃんといたね。」

ライター美緑

「そんな常連さんがたくさんいらっしゃる。」

清さん

「まあ、ありがたいことに。みんな歳いかれたけど。」

ライター美緑

「長く愛されている証拠ですね(笑)やっぱり近所の人が多いんですか?来られる方。」

清さん

「近所の人も多いし、遠くから来る方もおられるね。」

ライター美緑

「1番遠くて、どこから来ていますか?」

清さん

「滋賀県。」

ライター美緑

「え!?」

ある日ふらっと来たグループが、今では週に1 度顔を出す。石川県が地元なわけではなく、たまたま仕事で通っている金沢でこの店に入ったところ、気に入ってくれたのか常連さんとなった。

清さん

「他にもね、昔ここによく来とった子が、里帰りしたら必ず寄ってくれる。」

ライター美緑

「実家に帰るみたいな?」

清さん

「そう、そうそう。あとは、去年山形行ったんと、鳥取行ったんと、たまたまここで会って。おー何十年ぶり!?って(笑)」

ライター美緑

「(笑)同窓会みたいなことに。」

清さん

「ね、そういうの見ていると楽しいです。」

ライター美緑

「ここにこうやって人が集まるのは、清さんの人柄もあるんでしょうね。」

清さん

「いや、そんなことないけども(笑)いろんなお客さんと喋ったいたり、出会いがあると楽しいね。毎日毎日違うから。」

昭和の時代には、学生が帰り道にお店に集まっていた。そんな常連の学生たちが店でタバコを吸う事もあったそうで、たまにお巡りさんがお店に遊びに来た時には「今は吸ったらダメやぞ」とバレないように注意を促した。その時の学生が、今では立派にお巡りさんとなった。ほかにも消防士や救急車の運転手になった子もいる。

清さん

「神棚がね、ここにあるんやけど、消防とかお巡りさんの試験あるからって、その子らが拝んで行って。そしたら、受かったね。」

ライター美緑

「えー!ご利益あるんですね。あとで参っておこう(笑)」

清さん

「いや、楽しい時代やった。もうその子らも56、7になっとるさけね。」

昭和40年代頃が一番忙しかった。その頃は近くに工場があり働いている人が、お昼めがけてやってくる。そうかと思えば、スっといなくなり、次は学生さんがドンとやって来た。夕方になれば出前が忙しくなる。朝から晩まで、入れ替わり立ち替わりの日々だった。

はじめましての味にほっこり。あまり聞きなじみのない「金沢ジャジャメン」とは?

メニューを眺める。

ライター美緑

「このメニュー書いたのはお父さんなんですか。」

清さん

「この人。」

ライター美緑

「奥さん!めちゃくちゃ字が綺麗!達筆!字を習っていたんですか。」

奥さん

「普通です。(笑)」

清さん

「彼女のお母さんがものすごい上手な人で。」

ライター美緑

「あ、そうなんだ!へえ、すごい綺麗。」

美代喜さん

「字書く人おいでるけど、書いてもったら結構たかい。」

ライター美緑

「そうですよね。文字だけでも美味しそうに見える…。お腹空いてきました。そろそろ作ってもらってもいいでしょうか!?」

清さん

「何作る?」

ライター美緑

「うーん、先ほど言ってたジャジャメンと、ちょっと食べてみたいのがカレーうどん。」

清さん

「けいらもするか?」

ライター美緑

「けいらってなんですか。」

清さん

「卵をバーっと溶いて。あんかけにして。」

ライター美緑

「それをけいらって言うんですか。へぇ。知らなかった。」

清さん

「うん。今から寒なったらよく出るよ。」

ライター美緑

「じゃあ!お願いします。」

作ってもらっている間に、お店でビールを飲んでいた、常連さんだと言う男性に声を掛けた。

ライター美緑

「こんにちは!ちょっとお話良いですか?」

常連さん

「なんや?」

ライター美緑

「お父さんは、このお店の常連になってどれくらいですか?」

…ここからの盛り上がりを活字にすると、おそらく紙面をジャックしてしまう程のページ数になりそうなので割愛させて頂くが、ちょっとだけまとめると、ここに通い始めて20 年。最近は毎日が日曜日(笑)今日も昼から大好きなアルコール。同じ話をアンコール・・・。おたふくやさんで好きなメニューは味噌ラーメン。あまりにも美味しすぎて、自分の胃の容量を超えてしまったこともあるそうです(笑)すごく人間味に溢れて、いい常連さんでした!笑いが何度起こったことか…(笑)(この場を借りて感謝を伝えさせてください!ありがとうございました!)

そうこうしていると、出来立ての料理が運ばれてきた!!

清さん

「はい、ここに置くねー。」

ライター美緑

「これは?」

清さん

「ジャジャメン。」

!!?

見た目、ラーメンっぽいんですけど!?思ってたんと、ちがーーーう!!(笑)野菜たっぷり!では、いただきまーす♪

おっ?あっさりしてると思いきや、ほんのりパンチがある味…。

清さん

「にんにく入っとる。」

なるほど!そしてこの香ばしい風味は、ごま油ですね?スープは鶏ガラスープにかつおだしのうどんつゆを合わせてある。美味!!

清さん

「ソースをちょっと掛けるのが基本です。」

いやいやいやいや。ラーメンにソース?そんなの合うわけ…

合うーーーーー!!(笑)確かに味が変化して美味しい。結構味が変わるので、飽きずに最後まで食べられます!!

清さん

「はい次ね。」

来ましたよ、カレーうどん!うどん屋さんのカレーが美味しいってことは、ど素人の私でも知っているわけですよ。

(ひとくち)

うまーーーい(歓喜)

やっぱ、出汁ね。最高やね。カレーは飲み物やね。

清さん

「これで最後かな?」

???

けいら登場。

見た目は石川県の郷土料理、ベロベロ(えびす)とそっくり!!味は…やさしいのよー!ショウガがピリリと効いてはいるものの、出汁とたまごの風味でシンプル。清さん考案のメニューだそう。あんかけ&しょうがで、これはあったまるわー。

ごちそうさまですー!!満足で満腹過ぎた…胃の容量オーバーです…(笑)

「おたふくや」で使われている野菜は、清さんが畑で自家栽培を行っている、ほぼ無農薬の野菜だ。夏は朝の4時頃、秋は6時頃。明るくなる時間に畑に足を運ぶ。畑の管理は清さんがやっているが、畑からお店に戻る頃には、お店の下準備を美代喜さんが終わらせてくれている。二人三脚だ。

ライター美緑

「お店の味は昔から変わらないんですか?」

清さん

「昔からもうほとんど作り方も材料もあんま変わってないから。」

ライター美緑

「調べてみたら、お多福さんもジャジャメンやっているんですよね?味は同じなんでしょうか?」

清さん

「そうです。暖簾分けはしているから、レシピは同じ。でも作る人が変わると、ちょっこずつ変わるかもしれんよ。同じ材料でお味噌汁作っても、人が変われば少し違うでしょ?だからその程度ぐらいで。」

ライター美緑

「『金沢のジャジャメン』との事でしたけど、私の知っている『ジャジャ麺』とは違ったんです。盛岡にも、韓国にもジャジャ麺ってあって。それぞれ違うんですけど、この『金沢のジャジャメン』はどうやって出来た商品なんでしょうか?」

清さん

「聞いたところによると、昭和30年に石川県で『全国麺類飲食業者大会』と言うものが開催されて、その時に金沢で考案されたのがこの『金沢ジャジャメン』。それをお多福さんが継承したみたい。」

ライター美緑

「大会用に作られた味だったんですね。で、今はお多福さんのメニューに。」

人生のほとんどが「おたふくや」での時間。手間を掛けた味を伝える事の難しさ。

ライター美緑

「しんどいなって思うことってないんですか?」

清さん

「なんもしんどいと思うことはないな、仕事は楽しい。」

ライター美緑

「すごい!中学時代からだと、ほぼほぼ人生このお店に関わっているってことじゃないですか。それでも毎日楽しいって…天職ですね。」

清さん

「そうやね、うん。」

ライター美緑

「元々作るのとかは好きだった?」

清さん

「だんだん好きになってたんかねぇ。」

ライター美緑

「もうそろそろやめようかとかは。」

清さん

「なんもない!」

ライター美緑

「いい!!では、その…跡継ぎというか、後継者というのはどうお考えですか?」

清さん

「それが問題なんやって。弱ってる。でも姉の子供が今、結構手伝いしてくれとるから、もしかしたら…と思っとるんやけど…。」

ライター美緑

「お姉さんのお子さんが!では、そういう話はしたことはないんですか?」

清さん

「なんもしとらん。でもね、手伝いながらだんだん自分で自覚してくれたらいいなとね。親の店やから。」

ライター美緑

「そうなってくれたらいいですね。」

美代喜さん

「かたい子よ。お昼休憩時間に仕事場から来てくれる。」

ライター美緑

「あ、じゃあ、別の仕事しながら。」

清さん

「ちょっと行ってるんやけど、昼に一回帰ってきて。ありがたい。ほんで夕方と。」

ライター美緑

「別の仕事をしていても、少しでも駆けつけてくれるのは、心強いですね。」

清さん

「自分もだんだんくたばって行くから。もう74 やからね。」

ライター美緑

「まだまだですよ。」

清さん

「いや、まだ元気ではあっても、あと10 年できるかできんかよ。」

ライター美緑

「寂しいですよ、そんなこと言うと。」

清さん

「普通の店でも後継者おらんってだいぶ弱っとる店いくつもあるしね。」

後継者問題。足を運ぶ私たちにとっても、無くなってほしくないお店は多いです…。

ライター美緑

「もしも、他にこの味を継ぎたいって人が現れたら?弟子にしてくださいとか。」

清さん

「いやー…継ぎたいっていう人あんまり来ないです。昔みたいに、忙しいってこともないし、新しい店やったらそう言う人もおるかも分からんけど。うちは、出汁から全部手作りやし。カツオも鶏ガラも。昔ながらのやり方で…だからなかなかね。」

ライター美緑

「手が込んでるから。」

清さん

「そうそう。大変だからね。」

昔ながらの引き戸を開けると、変わらない顔が出迎えてくれる。いつも注文するメニューを口に運ぶと、変わらない味が口の中に広がる。そして心は懐かしさで溢れ、また頑張ろう!と気持ちが上がって店を後にする。変わらずに来ている常連さんはきっとこんな風に感じているんだろう。清さんと美代喜さん。いつまでも変わらずに元気に続けてほしいなと思いました!ありがとうございました!!感謝。

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