思い出に残るここだけの味じゃ〜ま【閉店】

No.24

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

美人店主が作る

体にもお財布にもやさしいお惣菜屋さん

七尾駅より徒歩4分の駅チカに位置する32年続くお惣菜屋さん「じゃ~ま」。平成と言う時代を歩み、何年も通い続ける常連さんたちにこのうえなく愛されているお惣菜屋さんとは一体どんなお店なのか。むむむ。期待に胸が膨らむ。
(取材:絶メシ!いしかわ調査隊 ライター名:美緑トモハル)

圧巻のショーケースがお出迎え

到着!
電車の線路付近。キレイな青空の下が良く似合う、昭和から続いている「絶メシ」にはもってこいの外観!!・・・失礼っ

ちいさな店内にはお惣菜が並べられているショーケースがどどどん。
取材時はすでに売り切れ状態でした。おぉ。(※写真は後日撮影させていただいたものです。)

お店に入るなり、とてつもなく懐かしい香りに包まれた。

近所に欲しいお惣菜屋さんとはこの店の事だ

台所はスッキリとしていて、何十年も使っている割にとてもキレイ。疲れて帰ってきた実家で心がほどけていく感じである。あぁ、ほっとする。

ライター美緑
「なんていい匂い。」
蠏さん
「そう?私、なんにも感じないわ~。」

お店からのぞく店主は、ハキハキと話す細身で顔立ちが整った女性だった。染めてないという髪にはおしゃれな生地の頭巾が巻かれているがチラリとのぞくシルバーの前髪がカッコイイ・・・。

ライター美緑
「今日はよろしくお願いします!」
蠏さん
「なに話せばいいんか分からんけど(笑)」
ライター美緑
「(笑)では早速なんですけど、このお店の名前の由来ってどこから?」
蠏さん

「私、珠洲の生まれなんですけど。七尾でも年配の方がいうの聞いたこともあるかな。自分の奥さんのことを「じゃーま」と呼ぶんや。そこから、『奥さん都合が悪いときには私が作りますよ!』って意味で。」

一同納得の「おーーー…」が出た瞬間であった。ストンと腹に落ちるとはこのこと。
ライター美緑
「なるほどーー!!」

毎日のメニューのレシピはすべて頭の中に!?もしかしてサイボーグ疑惑

ライター美緑
「毎日出すお惣菜はどうやって決めているんですか?何を作るか決めてから仕入れ?」
蠏さん

「いえいえ。毎日決まった時間に八百屋さんから電話がくるので、それで食材を相談して決めてます。でも毎回ケンカするんや(笑)」

ライター美緑
「ケンカ!?(笑)」
蠏さん
「『なんでいつもそれしかないが?なんかないが?市場にそんなもんしかないが?』って」
ライター美緑

「おぉぉ(笑)ガンガン行きますね!でも確かに、ひとつの野菜に対しての料理のレパートリーって無限じゃないですもんね…。あ、お総菜のレパートリーはどれくらいあるんですか?」

蠏さん
「わからん。数えたことない。」
ライター美緑
「…すごい数になりそうですが、いつか数えてみたい(笑)」
蠏さん

「毎日のお客さんもいらっしゃるから一緒ってわけにはいかんし。煮物3種類と酢の物はいつも変えとるね。」

ライター美緑

「ひと晩の献立を考えるのもままならない私としては崇めたくなるほどの種類ですねきっと。レシピはどこかにメモしてあったり?」

蠏さん
「なーん。全っ部、頭の中。」
ライター美緑
「凄すぎる・・・壁のメモを見る限り、毎日お弁当を注文してらっしゃる方もいますよね??」
蠏さん
「そう(笑)うちはお弁当も日替わりで毎日違うおかずを入れてる。」
ライター美緑
「お弁当はいつもどれくらい作られるんですか?」
蠏さん
「大体20~30個かな?」
ライター美緑
「え!?ひとりで全部作るんですか!?」
蠏さん

「そうやね。お店は朝6時からやから、仕込みは午後からやって、当日の朝は2時起き。3時頃には遅くともお店で作業してる。」

ライター美緑
「えー!?ちなみに何時に寝るんですか?」
蠏さん
「9時かな。」

足りてない。。圧倒的に睡眠時間少ない・・・レシピの事といい、もしかしてサイボー・・・ぐっとこらえて質問に戻ろう・・・

ライター美緑
「お弁当ってふらっと寄って買う事はできない?」
蠏さん

「そうやね。最近は予約をしないと買えない。よっぽどじゃないと作れなくなってしまって。日替わりのおかずが無くなったら作らんからね~。」

昔から基本的には作り置きゼロ。作り終わらないと家に帰れないそうで。。。大変だ。
じゃ~まの定番はポテトサラダときんぴらでそれ以外のおかずは毎日日替わり。作業量がかなり多いのだろうと想像できる。
お惣菜の味が気になるので、人気がある唐揚げが入ったお弁当を作ってもらう事に!!
やっほい♪

蠏さん
「じゃあ今お弁当作るね。(炊いている煮物)嫌いじゃない?」
ライター美緑
「大好きです。嫌いなものないんですよ」
蠏さん
「なんでも食べるからそんなにスマートでいられるんかね?」
ライター美緑
「えー?そうなんですかね?」

外野から「そこまでスマートじゃないんですよ」という声が聞こえる。
気のせいだと思いたいが現実だ。見た目では分からないが夏に輝く二の腕はたくましい・・・
謙遜って言葉を覚えるようにします。

ふたの概念って一体・・・仕切りとして使われる運命。ボリュームの王様、発見。

お弁当はサービス品なんです。と、蠏さん。
このボリュームで450円!ご飯の大盛は50円UPだが、そもそも・・・
今回のおかずは、からあげ、煮物、がんも、貝ひも、きんぴら、梅干しに漬物。
見ての通りふたは閉まらないので、乗せるだけ(笑)・・・わんぱくだわ~。
撮影用にサービスしてないか疑惑が出てくるほどのボリュームだ。

ライター美緑
「いただきます!!!」

からあげ、うんまっ!!冷めてもうまい、この唐揚げの柔らかさよ!!
おや??きんぴらが、、、ささがきじゃない。ごぼうが柔らかくて、歯につまらない!(笑)
このきんぴらは、ここでしか食べられない味だわ。

蠏さんは、「食材も吟味してる。国産のものが多く、化学調味料を使ってないし、料理酒も日本酒を使ってる。なんとなくやけど、それが昔ながらの味なんかもね。自然の味や。」と。
サラッとすごいことを言っている。お惣菜屋さんでなかなか出来る事じゃない。
実は、調理器具も使わず包丁一本で総菜を作っているのにも驚いた。
やはりサイボ・・・いやいやいや。冗談です!!(・・・そんなことはみんな分かっている)

ライター美緑
「すごい手間暇かかってますよね。」
蠏さん

「料理は時間がかかるもの!お客さんにお出しするとなればなおさら。うちの母親がそういう器具も使ってなかったし。」

味と言う名の思い出。誰の心にも残っている大切な味と人との絆。

ライター美緑
「なるほどそこから来てるのか。蠏さんのお母さんは料理が上手だった?」
蠏さん

「うん。すっごい美味しかった。妹とよく話すもん。お母さんのごはん美味しかったよね~って。もう2度と食べられないけどね。」

ライター美緑
「切ない・・・。思い出の味が一番おいしかった記憶に残りますよね。小さいころに食べた味。」
蠏さん
「そうやね。」
ライター美緑

「ここのお客さんの思い出の味が、蠏さんの作る味だとしたら、同じ気持ちになる人もいますよね。昔通っていた高校生とかもそうだと思います。大人になっても通い続ける根強いファンがいるってそういう事だと思います。」

お店にお米を卸してくれているのは、当時お店に通っていた高校生だという。強い繋がりに心があたたまる。
蠏さん

「このお店を始める前には医療事務をとったりしたけど、娘二人と3人では生活できんって思ってね。でもお店しても大したことなかったけど(笑)」

ライター美緑

「32年続くお店って、大したことあったって事ですよ!!」

蠏さん

「そうなんかね?お客さんのお陰や。ありがたいと思う。妹が東京にいて、やっぱりお惣菜屋さんあると気になってのぞいたりするみたいやけど、すぐお店自体が無くなってしまうし、都会は早いよ~って言うとる。良く続いとるねって。でもそれは私が続いとるんじゃなくてお客さんが来るのを続けてくれとるんやって。」

ライター美緑

「いやいや!それは逆だと思います!美味しく作ってくれて、蠏さんの人柄があるからみんなずっと通い続けたくなるんですよ!こんなに沢山の人に愛されているお店…誰かに継いで欲しいと思ったことは?」

蠏さん
「私で終わりや~」

言い切る蠏さん・・・。
美緑はその言葉をしり目に、みんなの「じゃーま」になっている蠏さんが辞めてしまったら、なんて切ないんだろうなという気分になった。

ライター美緑
「みんな、もっと食べていたいと思いますよ。」
蠏さん
「そーかな?じゃ、もうちょっと頑張ろうかな。」

蠏さんからは「お陰さまの精神」がひしひしと伝わってくる。
美味しいから足が向く。そこに食べたいものがあるから通い続ける。
高校生が大人になって、それでもまだ通い続けたくなる味と温かく迎えてくれる蠏さんがここにはいる。唯一無二なのです。

まだまだ元気で美味しいお惣菜とお弁当を作って、どんどんみんなの思い出の味にしてほしいと切に願う、美緑でした!!いや。もうすでにそうなっていますね(笑)
楽しい話と美味しいお惣菜をありがとうございました!
  • このエントリーをはてなブックマークに追加