開店1年目!思い出を引き継ぐ店角の店

No.21

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オープン間もないはずなのに

昭和の風情漂う、昔ながらのお好み焼き屋!?

金沢の長町。市営中央体育館付近から細い路地を入り、住宅が立ち並ぶ道をトボトボと歩いていると、食欲が掻き立てられるあのソースの香りが漂ってくる。今回、絶メシ調査隊が訪れたのは、なんだかとてもノスタルジックな気分にさせてくれるこれぞ昭和!なお店「かどのみせ」だ。

どどーーんっと、店構え!!暖簾がカワイイ。
事前調査によると、今の店主がお店を始めて1年程(取材時)で、以前は「島」というお好み焼き屋さんだったらしい。これはドラマティックな話が聞けるかも!?ってことで早速いってみよ!!
(取材:絶メシ!いしかわ調査隊 ライター名:美緑トモハル)

十数年の時を経て、
暖簾が掛けられることになった店主の想い

ライター美緑

こんにちわー!今日は、よろしくお願いします!

家倉さん 家倉さん

はい、よろしくお願いします。

ライター美緑

あのー、早速なんですがこちらのお店、昔は「島」というお好み焼き屋さんだったと伺ったんですが、そのお店と家倉さんのご関係は?

素早い。挨拶もほどほどに、週刊誌の記者のような切込み。前のめり過ぎた・・

家倉さん

昔はね、このすぐ近くに長土塀小学校があって、50年くらい前かな?小学生の時に1日のお小遣いを握りしめて「島」に毎日のように通ってて。何も入ってないシンプルな生地だけのお好み焼きが15円くらいかな。一番安いメニューが5円のうずらの卵で。

ライター美緑

すごい時代。しかもうずらの卵??

家倉さん

昔ここに鉄板があってね、置いてあるうずらの卵を勝手に割って焼いてたの。

ライター美緑

わー。昭和にあった、信頼関係のなせる業ですね!!

家倉さん

おばちゃんがひとりでやってる店だったからね、勝手にやれって感じで。

ライター美緑

放課後は、このお店がたまり場だったんですか?

家倉さん

それが、まずはここで食料調達して、近くに駄菓子屋もあったから、そこでこういうものを買って(めんこや飛行機のおもちゃ)、また学校の校庭に戻るっていう。

ライター美緑

思い出深いお店だったんですねー

家倉さん

まあね。この辺り一帯は、昔は商店街だったんだよね。同級生には、魚屋とか、歯医者とか、色んな商店街のガキどもがいたし、そいつらがみんな集まってたと言う感じで。今は商店街がさびれて、住宅街になって、でも若いのがいなくて年寄りばっかり。

子供たちがこぞって集まるお店だったお好み焼き「島」も、当時切り盛りしていたおばあちゃんが亡くなってからは、十数年間、お店は閉店していた。さびれていった商店街の一部と化してしまった「島」の前を通るたびに、家倉さんはさみしい気持ちを感じて、とても気になっていたらしい。

ライター美緑

十数年閉まっていた、この思い出深い「島」を家倉さんが引き継いでお店を始めるようになったのは一体全体、どういったいきさつだったんですか?

家倉さん

小学校の一部が公民館として残ってたの。一昨年、それが解体されるってことで、これを機会に同窓会をしようと。で、その時の話題にしたわけよ。「島」、どうすんのかね?と。そしたらここに住んでる人間も分かんないとか言うから、どうなってるのって誰かやらないのか?と言う話になって。誰かやったら、みんな行くなーって。気になってしょうがなくて。正規の所有者の方に連絡を取ったら、今、ちょうど売りに出そうとしてたって言うから、じゃあ、買いますと。

ライター美緑

すごいタイミング!でも、この「島」を買い取る前は飲食店の経験があったんですか?

家倉さん

ないよ。今でも本業は全然違うんだよ。

ライター美緑

え!?本業じゃないんですか!?

すべてを継承するべく奮闘!レシピは同じでも簡単には出せない味に一苦労

家倉さん

今年の6月に、その会社の代表取締役から降りたので、その分、違う事やらしてくれと。

ライター美緑

代表取締役・・・!?(笑)奥さんは「島」を買い取ってやるって言った時どう思ったんですか?

奥さん

無理だと思った(笑)

家倉さん

やる気全然なかったみたいで(笑)だましだまし・・・でも作るの好きだから。東京にいたときにすでに飲食の営業許可証を取ってたからね。

ライター美緑

え!?奥さんは、飲食のお店をやろうと思ってたって事ですか?

奥さん

いえいえ。東京の事務所にいたときに、趣味でお菓子作りをやってて。そしたら事務所の片隅でお菓子でも販売したらいいんじゃないか?って。販売するにいたっては、資格がいるので、取れる資格から取ろうって事で。

ライター美緑

へー!どんなお菓子を作られてたんですか?

奥さん

クッキーとか焼き菓子かな。まあ、当時は厨房もないので、申請はしなかったんです。

ライター美緑

すごい!でも今、ちゃんと活かされてますもんね。

奥さん

そうですねー。

ライター美緑

お好み焼き「島」の味はどうやって引き継いだんですか?

家倉さん

店主のおばあちゃんの娘さんにレシピとか仕入れ先を教えてもらって。提供スタイルも一緒。どんぶりとフォークで出てくるのが、特徴的というか。これを懐かしむ人が多い。

ライター美緑

味も、スタイルも同じ!このレシピを受け継いですぐ同じ味に?

家倉さん

もちろん、私らは言ってみれば素人だから、最初はこんなもん食えるか!っていう状態で(笑)そこからお客さんからの意見とか娘さんに教えてもらったりとかでソースのブレンドの仕方も変えて「島」の味に近づけていったね。

ライター美緑

娘さん、ちゃんと覚えているんですねー。

家倉さん

お母さんの手伝いをやってたからだろうね。

お店の名前の由来も聞いてみた。やはりそこは、角にあるから角の店なのだろうと高をくくっていたら、なんとたまたまだという。日本の大学卒業後、ドイツのホテル学校に留学していた家倉さんはいつかパン屋をやりたいと思っていたそうで、その時に考えていた店の名前が「An der Ecke」。ドイツ語で「角の」とか「角にある」って意味らしい。それがそのまま今の店名の由来となった。すごい偶然だ。

ライター美緑

昔から変わらないメニューはありますか?おすすめとか。

家倉さん

焼きそばだろうね。

ライター美緑

お客さんとしては?近所のお子さんとかは来たりしますか?

家倉さん

昔みたいに、子供たちだけでっていうのはないかな。親と来る事が多い。でも昔を懐かしむ常連さんがちょくちょく来てくれて、今、どじょうも焼いてるから。

実は家倉さん、七尾でどじょうの養殖もやっていて、このお好み焼き屋もどじょうも会社の部門なのだそうだ。いつかどじょうのかば焼きもやるだろうと、若い社員が金沢のお店に修行に行き技術を学んでいたそう。付近はご年配の方も多く、どじょうを扱うことで、お店に興味を持ってくれるので、集客に一役買ってくれている。

ライター美緑

忙しいですね。

家倉さん

人間、どれだけできるかってところだと思ってるんで、これが限界かな?と本業はね20年くらい代表をやって、海外での展開もしてるし。

ライター美緑

幅がやたら広いですよ・・・海外での展開から、お好み焼、どじょうの養殖。

家倉さん

普通でしょ。

ライター美緑

普通って何だろう・・・(笑)

思考が停止しそうになったので、ここでおすすめの焼きそばとお好み焼きを頂く事に!!

ライター美緑

おおおお。これが「島」から引き継いだどんぶりスタイルの焼きそば!なんだかモチモチしてる~。確かに、お好み焼きのソースも懐かしい感じ。イカ天が香ばしくて、幸せな気分になります!

スマック。幼少の記憶を呼び覚ます感覚に終始わくわくをも味わったミロク。お好み焼きは、食事!というよりはおやつ。それがまた懐かしく嬉しくなる。かと思いきや、どじょうのかば焼きは本格的で、思わず叫んだ。
ビーールーーー!!!
しかし。今日は流石に取材なので出てくることはない・・・。メニューの安さにも驚いてしまうよ。今、令和だよね??一応確認(笑)

店主となる事は運命だった!?
さらなる後継者への思いは?

ライター美緑

同窓会の時に、「島」が復活したらみんな行くって言ってたのは?

家倉さん

誰も来ない。

ライター美緑

(笑)次回の同窓会をここでやったらいいんですよ。十数年空いてなかったお店が開くって感動すると思います!

家倉さん

ボロボロだったんだけどね。でも鉄板はそのままあったし、カウンターもこのテーブルも昔のまま。

ライター美緑

へえー!ところで家倉さんは、お子さんはいらっしゃるんですか?

家倉さん

うん、いる。

ライター美緑

いつかこのお店を継いでもらいたい気持ちは?

家倉さん

それは無い。長男は、本業の仕事の方に入ってもらってるから。ここはあくまでも、道楽。

ライター美緑

じゃあ、「島」を引き継いだ家倉さんのような存在が出てきたら?

家倉さん

まあ、そんな人出てこないよ。儲からないからね(笑)

ライター美緑

お店自体がまだまだ知られてないんじゃないですか?人気出そうなんですけど。

家倉さん

取材の話は何件か貰ってるけど、忙しくなっても対応できないから。今で十分。

ライター美緑

残念。でも色んな人に教えたくなるお店なので、この先、増えると思います(笑)

家倉さん

そう思ったら、たまには来てくださいね!

家倉さんから聞く話は全て、元「島」である「角の店」の店主を家倉さんにするために起きていたんじゃないかと思うような話ばかりだった。タイミングよく購入できた「島」、奥さんの資格取得、店名、どじょうのかば焼き。懐かしむように当時の思い出を語る姿は「島」への愛情そのもの。まだここに、少年だった家倉さんがひょっこり現れそうなほどの体温を感じた。

「この住宅街を、昔みたいな商店街にできたらなー」。店内には、当時と現在が比較できる地図が貼られていて、いつか本当にその夢を実現するんじゃないか?と思ってしまう。「角の店」は始まったばかり。いつかこのお店の周りにまた沢山のお店が出来て、活気が戻ってくることを陰ながら応援しています!!
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