要望に応えて復活ギョウザの福華

No.14

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店をたたむも惜しまれた、

中華料理店の餃子を、

自宅で再度提供する。

能美市緑が丘の閑静な住宅街に、餃子専門店『福華』がある。見た目は普通の一軒家。特徴があるとすれば、ギョーザと書かれたのぼりが2本でているだけ。なんでもこの店、40年間以上続けた中華料理を一度はたたむも、訪れていた客から「餃子だけでも作ってほしい」と強い要望を受け2013年、餃子だけをテイクアウトできる店をオープンさせたという。

(取材:絶メシ!いしかわ調査隊 ライター名:寺田尚人)

ライター寺田

「こんにちは。絶メシ調査員の寺田です。この店、あまりにもこの住宅街にとけこんでおり、どこにお店があるのか分からない…。何を隠そう自分も、店が分からず迷いながらなんとか辿り着きました。目印はのぼりだけ! 提供するのも餃子だけ! そんな店で、お客さんの要望から復活した餃子…。いったいどんな魅力があるんでしょう? 道に迷ってお腹も空いているので、さっそく行ってみましょう!」

とはいえ、完全にご自宅…。

一体どこから入れば、そもそも家に入るのか?

などと考えていると、道路に面している窓が開き、店主の佐々木俊明(ささきとしあき)さん73歳が声をかけてくれました。この窓が、餃子の受け渡し口になっているらしく、スタンドメモには、しっかりと営業中の文字が!

佐々木さん
「いらっしゃい」
ライター寺田

「こ、こんにちは(ビックリした~)。自分、絶メシ調査員の寺田です。本日はよろしくお願いします」

佐々木さん
「あ~。ようおいでた。立ち話もなんだから家上がりな」
ライター寺田

「(あぁそういえばテイクアウトの店だった…)。すみません。お言葉に甘えておじゃまさせていただきます」

と、いうわけで佐々木さんのご自宅に上がらせてもらい、話を聞くことに。

ライター寺田
「お店? ご自宅での餃子の販売は2013年から始められたんですよね? 今までは何をされていたんですか?」
佐々木さん
「中華料理や。店名も同じ『福華』。縁起かついでつけたんや」
ライター寺田

「へぇ~。失礼ですが、前のお店はどこでやられていたんですか?」

ライター寺田

それで、今のように餃子だけのテイクアウト専門店になったんですね。それにしても、飲食の経験なしで、どうしてお店やろうって思ったんですか?」

佐々木さん

「元々、飲食の世界に興味があったからな~。最初は和食の店をやりたかったんや。たまたま兄が中華やっとっから、基礎を学んでな。それから自分でも大阪に修業行ったんわ。それで昭和52年、30歳の時かな山代で店をオープンしたんや」

オープン当時は、餃子はもちろん、ラーメンやレバニラ、麻婆豆腐など様々なメニューを揃えていたという。「山代温泉も近かったから、夜間が特に盛り上がっていたなぁ~」と昔を懐かしむ佐々木さん。

佐々木さん

「地元の人も来てくれたけど、観光で来られる人も多かった。仲居さんと来られ人や仕事で全国回っとるような人もおってな~。そんな人はみんな舌肥えとるし、寿司とか高い店なんかに行くんや。でも、ありがたいことにそんなお客さんが別のお客さん連れてウチにもよう来てくれたわ」

ライター寺田

「山代で構えた店も評判だったんですね。そのころから、餃子は人気だったんですか?」

佐々木さん
「まぁまぁやな。まぁこだわって作ってたから、それなりに人気だったわ。その後、平成元年にわしの地元でもある辰口に店移転させてからもメニューは変えなかった。移転してからもやっぱり餃子はようでてたな。そん時の店名もむろん『福華』や。実はな、その時くらいから、引退後も考えて、今の場所(緑が丘)に土地も買っとったんやわ
ライター寺田
「じゃあもう将来的にここ(緑が丘)に来るつもりだったんですね」
佐々木さん
「そうや。周りには何もなかったしな。まさかここで店するなんで思ってもみなかったわ(笑)
ライター寺田
「ちなみに…この辺りって、あんまり中華料理屋ってないですねよ? 移転当時の反響とかどうだったんですか?」
佐々木さん
「そうなんよ。周りには、中華料理店だけじゃなく、飲食店もあまりなかったからなぁ~。本当にいろんな人来てくれたわ」
ライター寺田
「移転してから、あっという間に地域に根付いたんですね」
佐々木さん
「宣伝とかやってなかったけどなぁ。みんな口コミで店知ってもらったわ。店閉めたのは約8年前かな。まぁ餃子だけでもやってくれと言われて、ここに立てる家の図面を書き直して販売するスペースを作ったんや。今でも近くの人達がうちの餃子を宣伝してくれてるみたいでな、若い人も店に来てくれるわ」

そして、何かを思い出した佐々木さん。

見せてくれたのは前の店で作ったマッチ。

「だいぶ残ってるわ」と佐々木さんから見せてもらったマッチは、店をたたむちょっと前に作ったという。これを作っていたということは、本当はもっと店を続けたかったんだろうなぁ~と考えてしまいました。

ライター寺田
「お店やるために家の図面を書き直したんですよね。いいタイミングで、いいきっかけをお客さんから貰ったんですよ! みんな佐々木さんにお店続けてほしかったから。ちなみに、すでに自宅が立ってたら餃子の販売はどこでやろうと思ってたんですか?」
佐々木さん
「やっとらんかったかもな~。まぁまずは、餃子食べてみ? 焼いてあげるから」
ライター寺田

「おぉ!(展開が急ですが、腹ペコな自分にとってはありがたい!) 是非是非お願いします」

佐々木さんは餃子を焼くため先ほどの販売スペースへ。

こちらで仕込みもやっているのだそうです。

ライター寺田

「ここで餃子も焼くんですね。というか、佐々木さん一人入ったら、もういっぱいいっぱいのスペースですね」

佐々木さん
「スペースは最小限や。調理器具なんかも昔の全部処分してしまったから、新調したんよ(笑)」

辰口でお店をやっていたころ、肉もご自身でさばいていたのだとか。現在は国産の豚バラ肉を仕入れ、餃子専用の調理機材を使って餡を作っている。ミンチに合わせるハクサイやニラ、ニンニクは地元野菜も使っており、むろん国産にこだわっている!

ライター寺田
「冷凍餃子は7個で400円、焼き餃子は6個400円で出してるんですね。(どちらも税込みで一人前の個数だそうです)」
佐々木さん
「冷凍のほうをおすすめしとる。冷凍なら一カ月くらいは持つから、おかずがもう一品欲しいってときにすぐに調理できるしな。10人前とか買っていく人も多いわ」
ライター寺田
「なるほど。ストックしておけばいざという時に楽ですもんね」
佐々木さん
「そうや。焼いたのも提供してるけど、家着く前に冷めてしまうのとパックすると、どうしても蒸れすぎてしまうから旨味も落ちてしまうからな~。やっぱり焼き立てを味わってほしいから冷凍のほうを進めているんや。でも、近くで一人暮らしの人とかには焼き餃子のほうが人気かもな~。できるだけ美味しく食べてもらいたいから、お皿持ってきてもらって、はよ食べてって言っとるわ。後は冷凍買ってもらっても上手く焼けんと、それはそれでだめだからな~。冷凍餃子初めて買う人には、焼き方を書いた説明書もあげとるわ

こちらが佐々木さんがすすめる、
焼き方レクチャーがかかれたメモ

メモの通り、油をひき冷凍を凍ったまま並べて焼き上げ開始!

ライター寺田
「餃子一個一個が大きいですね!」
佐々木さん
「それもこだわりの一つやね。餡はなるべく多く、これは機械にはまねできんわ。手作りだから調整できるんや」

ジューっと心地の良い音が厨房に響き、
ついに焼き餃子が出来上がりました!

きつね色になった餃子は、醤油と酢を一対一で混ぜられた自家製タレにつけていただきます。テイクアウトの際にも、この自家製タレが貰えます。

では! 出来立て餃子を早速いただきます!

ん?

んん? うまっ! 薄めの生地ですが、モチッとした食感がしっかりとあります。餡の量も多く、生地の中から肉の旨味とハクサイの甘味が溢れんばかりの肉汁と共に口に流れ込んできます。餡のジューシーさに野菜のシャキシャキとした食感がたまりません! この自家製タレの酸味も餃子全体の味を引き締める、いい仕事をしています。そして気が付けば、一人前(6個)をペロリと完食。

ライター寺田
「美味しいです! ジュワっと肉汁が広がりますね。また、野菜が余分な脂身を中和してくれているのか、具材も多めでこんなに大きいのに重たくない! スルスル食べられますね。なんだろう、肉の味があるジューシーな野菜を食べている感じですね」
佐々木さん
「焼き立てでしか味わえん。だから、わしは冷凍をおすすめしてるんや」
ライター寺田
「肉と野菜しっかり食べてるーって感じ。この芳ばしさも焼き立てじゃないときっと味わえないですね」
佐々木さん

「よかったわ。わしの自慢の餃子で喜んでもらえて」

ライター寺田
この餃子が惜しまれるが分かりますわ。もしよければ、餃子のレシピは見せてもらえたりしないですかね~(これだけ美味いと配分とか気になるので、ダメもとで…)」
佐々木さん
「レシピはないわ。全部わしの頭の中やしな(笑)。後、少しづつ改良加えてきたからなぁ~」
ライター寺田
「じゃあもうこの味は佐々木さんにしか出せないんですね
佐々木さん
「そうかもな。生地はオーダーだけど、餡のバランスや包みで完成度も変わってくる。わしは週2回、大体1400個くらい餃子を作ってるからな。やっぱり体に染み込んでるんだろうね~
ライター寺田
「すごい量仕込んでるんですね。でもそれだけ佐々木さんの餃子を楽しみにしている人がいるってことですからね。そのレシピを受け継がれる方っていらっしゃるんですか?
佐々木さん
「息子がおるけど、違う仕事してるからなぁ~。一応レシピは残そう思ってるがなぁ…。大変や、餃子だけで商売するのもな(笑)わしも何も言われなかったらこのまま引退やったからなぁ~。身体動くうちは餃子作り続けるけどな(笑)」

夢見た飲食の道。その夢を叶えて構えた店を、一度はたたむもその味が忘れられない人々の思いから再度奮起した。身体を壊しながらも「餃子を求める人がいるかぎり作り続けたい」と語る佐々木さんが、出来る精一杯の範囲で形にした『ギョウザの福華』がここにある。大きめの餃子には、佐々木さんのこだわりがビッシリと詰まっている。最後に持ち帰りで冷凍餃子を購入すると「上手く焼けなかったら電話して(笑)」と冗談を交える佐々木さんから、この人は本当に料理と人の笑顔が好きなんだなと感じました。また餃子買いに来ますよ!

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